東京五輪開催に伴う中断期間を経てプロ野球はシーズンが再開した。後半戦は6月下旬に育成選手から支配下登録選手への復帰を勝ち取った巨人の「ミレニアム世代」右腕・直江大輔に注目だ。先発予定の8月18日のヤクルト戦(松山)でプロ初勝利を目指す。
直江は7月25日の侍ジャパンとの強化試合(楽天生命)に先発し、5回1失点(自責点0)4奪三振の力投で首脳陣の評価を上げた。その後のエキシビションマッチでは2試合に先発して好投。後半戦の先発の座を自らの力でつかんだ。
「オリンピックで金メダルを取った選手を抑えられたことは自信にして後半戦に臨みたいです」
これまでの道のりは決して平たんではなかった。高卒2年目の昨季は1軍デビューを果たして3試合に先発したが、シーズン途中の10月に腰のヘルニア手術を受けた。もともと腰部の骨の間にある組織が変形し、神経を圧迫する「ヘルニア」持ちだった。保存療法で痛みと付き合いながら投げる選択肢もあったが、万全の状態で今季に臨むために早期の手術を決断した。今季はリハビリの影響を考慮し、1軍公式戦に出場できない育成選手として再出発。背番号は「54」から「054」に変更となった。術後の経過は良好だったが、直江は高い壁にぶつかった。
「正直、手術をなめていました。もともと手術に対して抵抗もなかったですし、むしろもっと良くなると思っていましたけど、その考えが甘かった。手術したことによって失われる部分をどうするのか、という考えが足りなかった。実際に手術して、体がそれなりに変わってしまった。受け入れるのに時間がかかって、ダメージを受けました」
柔軟性が失われ、ランニング中などに周囲から術前の動きとの違いを指摘された。手術すれば元の体に戻るとイメージしていたが、実際はそうではなかった。
「体が変わってしまったことはショックでした。僕は今までと同じように同じ感覚で動いているつもりでも、他人が見て違うなら、明らかに動きに変化が出ているんだなと。痛みはないですけど、どうしても動きの中で腰や背中をかばって無意識に制御している部分は今でもある。だから、元に戻すのではなく今の体に合わせていかないといけない。そこに気づくことができてからは、いろいろ変えていきました」
3月に3軍戦で実戦復帰したが、今季公式戦初登板となった5月3日、2軍のイースタン・リーグDeNA戦(G球場)は4回8失点と崩れた。「とにかく結果を出すことしか考えていなかった。目指す結果を出そうとしたら体がついてこれなくて、空回りしてしまった」。桑田真澄投手コーチと話し合い、フォームを修正。動きが硬かったことを受けて柔軟性を出した。
すると、5月の3軍戦と6月17日のイースタン・ロッテ戦(浦和)で自己最速150キロをマーク。6月24日の同ヤクルト戦(G球場)ではプロ初完投を完封で飾り、支配下登録選手復帰をつかんだ。背番号は「54」に戻った。
「もともと(前に)突っ込みやすかったので、上体が前に出ないように残すこと、体幹と下半身を使って投げられるように変えました。気持ちと体の動きも合ってきて、ひとつの目標だった150キロもクリアして結果もついてきて、ようやく支配下に戻ることができました。手術して良かったと思いますし、たくさんの人にサポートしていただいたので、そういう方たちの力があっての成果だと思います」
283日ぶりの1軍マウンドとなった7月1日の広島戦(東京D)では中継ぎで3イニング無安打無失点1奪三振の完全投球で、プロ初セーブをマークした。宮本投手チーフコーチは「直江には先発として後半戦のMVPを取るくらいの活躍を期待している」と話している。その言葉に応えるための第一歩として、18日のヤクルト戦でプロ初勝利を目指す。
「後半戦開幕にあたり、ローテーションに選んでいただいたので、しっかり期待に応えられるように、なんとしても勝って勢いに乗っていきたい。(プロ初勝利は)しっかりと自分でつかみ取りたいです」
大きな壁を乗り越えた直江が、強い気持ちでマウンドに上がる。(報知新聞社・灰原 万由)
文・灰原万由
1997年6月20日。千葉市生まれ。24歳。大阪府吹田市育ち。東京工業大学附属科学技術高から中央大学法学部を経て、2020年報知新聞社に入社。今季から読売ジャイアンツ担当。主に直江大輔や横川凱ら若手投手、中山礼都や秋広優人らルーキー選手を中心に取材中。
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