現役時代はヤクルトスワローズ(現:東京ヤクルトスワローズ)などで捕手兼外野手として活躍し、引退後は読売ジャイアンツのファームバッテリー兼打撃コーチを担当。現在はDAZNのプロ野球放送で解説を務める秦真司氏が、今シーズンの野手陣に迫った。※インタビューは10/17に実施
(インタビュー・構成=川嶋正隆)
──打者についてお伺いします。今年の打線の中でも岡本和真選手の成長は大きいのではないでしょうか?
もともと能力が高い選手ですよね。特に逆方向にホームランを打てるというのは、相手バッテリーにとっては脅威です。岡本はボールに対する間がすごくいい。さらにボールのラインへの入り方、リズムがよくて、インパクトに力が集まりやすい振り方をできています。また、しっかりとボールを見逃すこともできている。
これは相手からしたら攻めづらさがありますよ。嫌な見逃し方されているので気持ち悪いですよね。しっかりとコースに投げたボールが、ほんの少し浮いただけで逆方向のスタンドに運ばれる。相手バッテリーは相当なプレッシャーを感じているはずです。
また岡本の両脇を固められたことも大きいですね。坂本勇人が3番、丸佳浩が5番に入り、その後ろに中島やウィーラーが控えています。これだけの選手が揃っていると、岡本との勝負でフォアボールでもオッケーというような攻め方ができなくなってしまいます。
どんな打者でも厳しい攻めをされると、打つのは簡単ではありません。しかし強気の投球でフォアボールを出してしまうと、ランナーをためて次の好打者と対戦しなければいけません。今年は坂本の調子があまり良くなく、丸もそこまでよくなかったです。それでも繋がりがある打線、隙がない打線が組めていると思います。
──まさに切れ目がない打線ですね。
それは吉川尚輝と大城卓三が入ったことで、より切れ目がなくなってきたのかなと思います。やはり打線のどこかに切れ目があると、相手バッテリーはそこで必ず抑えられると計算ができます。その切れ目がなくなったのは、吉川や大城が入ってきたから。相手にとっては非常に嫌な繋がりのある打線でしょう。
──大城選手は小林誠司選手のケガによって巡ってきたチャンスを掴みました。
バッティングが良い選手で、今シーズンはずっと3割近く打っています。これまでに1年を通して出続けることがなかった選手の1人なので、今は疲れもあると思います。それでも打撃能力は高さは素晴らしいものがありますね。
──吉川選手も昨シーズンの腰痛を克服し、ここまで二塁手として活躍しています。
吉川は打つだけじゃなくて、足もあります。この機動力という部分は大事な要素です。盗塁もそうですが、例えばランナーが一塁の状況で、1つの長打で帰ってくることができるかどうかは重要です。また次の塁を積極的に狙うことで、チームとして躍動感が出てきますし、攻撃において非常にプラスな要素です。
──盗塁は得点する可能性を広げると言われています。
アマチュア野球のデータですが、ノーアウトで盗塁する場合とバントをする場合では、得点につながる可能性が40%ほど違います。アウトを与えずに進塁することでは得点の可能性が大幅に上がるんですね。逆に盗塁阻止をすると得点力を抑えられます。
つまり、それほど盗塁はチームの攻撃力に影響を与えるのです。今シーズンでいうと増田大輝は19盗塁、松原聖弥が10盗塁、吉川が9盗塁。昨シーズンは彼ら3人で16盗塁なので(増田が15盗塁、松原が0盗塁、吉川が1盗塁)、彼らだけで20個ほど盗塁を増やしていますよね。ここが大きいなと思います。
また彼らが50個以上のフォアボールを選んでいます。松原が23個、吉川が27個、増田が7個。これを見ると、足が使える選手がしっかりと塁に出ることができています。こういった機動力が、ジャイアンツの得点増加の要因ではないかなと思っています。
機動力があるチームは相手にとって非常に嫌ですよね。特に増田は走塁のスペシャリスト。1点を争う状況で出てきて、しっかりと次の塁に進むことができる。相手にものすごく大きなダメージを与えることができますからね。
また、こういう選手が守備につくと守備範囲が広いので、相手の安打を防ぐことができる。バッテリーにとっては「打たれた」と思ったあたりをアウトにしてくれるのは、とてもありがたいことです。攻撃だけでなく守備でも機動力は必要。打つだけではなくて、勝利するための一点差を守る力も必要で、優勝するのはそういうチームだと思います。
──今名前が挙がった松原選手や増田選手は育成出身の選手ですね。
ジャイアンツの三軍が2015年からできました。三軍制によりチームの底上げができているように思います。育成選手だった松原、増田の他に当時は吉川や大江も三軍にいました。そういった彼らが一軍に戦力になれていることは素晴らしいですね。
彼らの活躍で2軍の選手にも火がつくなど、チーム全体としての底上げができています。また、昨シーズンは吉川がケガしたことで、二塁手のレギュラー争いが激化しました。チームとしていい実力至上主義が根付いているように思います。非常に高いレベルでタレントが揃ってきていますね。
さらに今シーズンで言えば、セ・リーグの個人成績の打率10傑にジャイアンツの選手はいませんよね。それでもこれだけの強さで首位に立っているのは、レギュラー陣だけでなく、やはり彼らのような脇役たちが育ち、活躍があるからこそだと思っています。
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