伸びしろだらけの40歳。沖縄・宜野座での春季キャンプ、私が一番目で追っていたはチーム最年長の糸井嘉男外野手だった。
今年のキャンプは何か違う。その“違和感”はベテランが若手とともに全力でバットを振り、全力でボールを追いかけていたからだ。昨春キャンプは外国人選手と別メニューで調整していた糸井。しかし、今季はチームが準備したフルメニューをこなしていた。
「ひとりでやっていても40歳すぎると『妥協しなさい』って神様の言葉が頭をよぎってくる。あえて、みんなの中に入ってやったほうがいいんです!」
雨が降るグラウンドで右翼と左翼の間を走り、ボールを捕球するアメリカンノックに若手と参戦。苦しいなかでもナインを盛り上げようと、膝を高くあげて走ったり、ボールを見ずに真っすぐ前を向いて激走するなど、笑いを誘い雰囲気作りを欠かせなかった。それを見届けた矢野燿大監督は「あいつ今年41歳だろ?すごいな」と脱帽。井上一樹ヘッドコーチも「大したもんだよね。みんなと一緒にやろうという気持ちがいい」とベテランの「やる気」を買っていた。
新しい発見を大切にした。昨シーズンは主に代打で77試合に出場し、打率2割8厘、3本塁打、18打点。13年続いていた開幕スタメンからも外れ、悔しい1年となった。「もちろん(開幕スタメンを)目指してやるのは野球選手では当たり前」と目指すものは変わらない。
打撃練習では藤井康雄1・2軍巡回打撃コーチから身体的構造を4タイプに分けて分析した「4スタンス理論」などを教わり、「新しい感覚」を楽しむようにバットを振り込む日々。1時間以上ロングティーを行った日もあった。同コーチは「彼の潜在能力はすごい。毎日選手がロングティーをやっているが、飛距離はチームで一番ですね。持っているものが素晴らしい。今年41歳にして伸びしろがあるというべきじゃないかな」と驚きを隠せなかった。
今オフは柔軟性を重視し、一緒に自主トレを行ったオリックス・吉田正には股関節や胸骨の使い方を教わった。その時にも「『全然(胸骨とか)使えてませんやん』って。『伸びしろえぐいっすね」って言われた」と後輩に突っ込まれ、新たな取り組みでの進化を実感した。
今キャンプでは紅白戦を含めた実戦5試合に出場し、全試合で安打をマーク(2月25日現在)。12打数5安打、打率4割1分7厘と好調だ。外野のレギュラーは中堅・近本が確定で、右翼・佐藤輝の可能性が高いなか、左翼のスタメン争いが勃発。2年目を迎えるロハスに、昨季パ・リーグの本塁打王、オリックス・杉本と自主トレに臨み打撃改革を行った江越、2軍でアピールを続ける高校通算37発のドラフト4位・前川(智弁学園)など、ライバルは多い。
キャンプ前には「勝負の中に加わっていかないといけない。サバイバルだと思ってます。調整ではなく、フルメニューをこなして、チーム内でいい勝負ができたら」と話し、アピールを続けてきた。「いつでも準備できてます」と笑う糸井。プロ19年目を迎える今シーズン。パワーアップした超人から目が離せない。
文・森脇瑠香(スポーツ報知)
1997年10月15日生まれ。24歳。和歌山県出身。和歌山大学から2020年に報知新聞社入社。21年から阪神担当。
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