阪神が一縷(いちる)の望みをつなぐのか。それとも、奇跡の扉はあえなく閉まるのか。首位・ヤクルトと10ゲーム差で迎える16日からの直接対決3連戦。キーマンは間違いなく、先陣を切る青柳晃洋投手(28)だ。置かれた立場を踏まえ、エースの覚悟をにじませた。
「本当に今チームもよくないですし、どんな形でも勝ちたいなというところはあるので。僕に勝ちが付くとかどうこうじゃなくて、チームを勝たせたいなという気持ちがあるので。何とかチームが勝つ可能性のある投球ができたらなと思います」
チームは危機的状況だ。7月末から後半戦3カード連続勝ち越しで勢いに乗ったかに思われたが、コロナショックに見舞われて一変した。今月5日に主力の大山が新型コロナウイルス感染で離脱すると、9日に中野、10日には近本まで戦列を離れた。打線が“飛車角落ち”どころじゃない事態に陥って、極度の得点力不足で6連敗。矢野監督も「そら苦しいよ。1番(中野)、3番(近本)、5番打者(大山)がいないんだから。やりくりも大変」と本音を隠さない。そんな苦境だからこそ、サイドスロー右腕は大黒柱としての役目を果たすつもりだ。
今季はここまで、12勝(1敗)、防御率1.39、勝率9割2分3厘でリーグ3冠だが、圧倒的な数字に加えて、登板内容も濃い。今シーズン、チームの連敗を5度も止め、そのうち自身4勝をマーク。「連敗しようが勝っていようが、勝てば選手もそうですけど、ヒーローなので、頑張るだけです」と自然体を貫くが、頼もしすぎる“連敗ストッパー”と化している。
強力な燕打線にも好相性を誇る。前回7月8日の一戦では、わずか3安打に封じるなど2試合連続完封中。いずれも、本塁打が出やすい神宮球場で成し遂げ、敵地を自らの“庭”かのごとく、20年6月23日から7戦負けなし5連勝中と文句なしの成績を残す。手元で動く直球、スライダー、シンカーを低めに集めて得意のゴロを打たせる投球がゼロ行進につながっている。もちろん、“お得意様”相手だからといって、当人に慢心はない。
「印象はいいと思いますけど、ヤクルトも(攻め方が)変わってくると思いますし、そう簡単にはうまくいかないと思うので、勝てるようなピッチングを、チームが勝つ可能性のあるピッチングができたら」
敵陣営が同じ轍(てつ)は踏むまいと対策を講じてくることは百も承知。その上で、どう上回ることができるか。昨年は主砲の村上に対戦成績5割3分3厘(15打数8安打)、3本塁打と打ち込まれたが、今年は6打数1安打とねじ伏せる。「正直言えば、ホームラン以外はOKな気持ちで投げているので。昨年の僕とは違う配球、違う攻め、最悪の場合に四死球やシングル(安打)OKぐらいの気持ちで投げているのが、いい結果に結びついているのかなと思う」。研究熱心で捕手とは積極的にコミュニケーションを図って、新たな配球を模索。飽くなき向上心も背番号50が球界屈指の投手に成長した理由の一つだ。
残り34試合のうち、ヤクルト戦は9試合もある。全勝するぐらいの戦いができれば、指揮官の「ドラマを起こしたい」という願いに活路が開けてくる。苦しい時こそ、矢野阪神の合い言葉「全員野球」を選手が体現できるか―。2戦目に安定感抜群の2年目左腕・伊藤将、3戦目は5月18日に神宮でプロ初完投&初本塁打を放った3年目右腕・西純が先発予定の今カード。まずは、エース青柳の快投が虎の命運を握っている。
文・小松真也(スポーツ報知)
1985年7月6日生まれ。36歳。18年に報知新聞社に入社。プロ野球遊軍記者を経て、20年から阪神担当。
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