10月12日に2022 JERA クライマックスシリーズ セのファイナルステージが開幕する。2年連続でセ・リーグ王者に輝いた東京ヤクルトスワローズが、ファーストステージを勝ち上がった阪神タイガースと対戦する。
DAZNで解説を務める秦真司氏に、2年連続日本一に期待がかかるヤクルトのキーマンを伺った。(取材は10月2日に実施)
CSのポイントは「選手の状態」と「データの分析と整理」
──クライマックスシリーズが開幕します。ペナントレースとは違った短期決戦ですが、CSを勝ち進むために大事なポイントは?
首脳陣がやることは大きく2つです。選手の状態を上げることと、レギュラーシーズンのデータの分析と整理です。
選手の状態については、特に投手が大事になります。一人でも多く状態のいい選手を揃える必要がある。それはコンディションだけではなくモチベーションも含めて。チーム全体を盛り上げていくことが大事になります。
レギュラーシーズンのデータについては、膨大な量が出てきているはずです。それをしっかり分析する。例えば打者に対してはカウント別、球種別にどういう結果になったかなどさまざまなデータがあります。首脳陣はそれを分析して、選手たちが決断しなければいけない状況の時に迷わないように、データでその手助けをする。その準備をしているはずです。
CSのような一発勝負では、どうしても失敗する怖さを感じてしまいます。だからこそ、首脳陣は選手たちが失敗を恐れないように準備する必要があります。
──過去に各球団でコーチをされてきた秦さんですが、そういう準備を大事にされてきたのですか?
私は準備力が選手たちの決断力につながると思っています。首脳陣ができることは、失敗する怖さを取り除くことと、積極的にいける要素を提示してあげることです。どこをどう攻めるかを、どれだけ提供してあげられるか。選手の背中を押してあげられるかが大事になります。
──ペナントとCSでは緊張の度合いも違いますね。
全く違います。甲子園球児のようなトーナメント形式に近い緊張感ですよね。誰もが日本一になりたいと思ってプレーしていますが、だからこそ「打たれたらどうしよう」「打てなかったらどうしよう」というネガティブな考えがプレッシャーになります。それは経験した人間じゃないとわからないものです。
彼らの決断を後押しできるように、我々はその要素を提示する。選手は積極性で大きく成績が変わるものです。ただ、いくら「積極的にいけ」と言ってもその根拠がなければ、迷いが生じます。そうなると後手になる。なので失敗する要素を取り除くことと、積極的にプレーできる後押しが必要になってきます。
どちらにとっても大事な1戦目
──今シーズンはヤクルトがセ・リーグ連覇を達成しました。CSファイナル出場が決まっていますが、ファーストステージを勝ち上がってきたチームを迎え撃つ難しさがあるのでは?
難しさの方が大きいです。優勝したいチームは、受け身になりがちで、逆に下から上がってきたチームは、負けて元々という思いで捨て身でくる。そういった勢いを持ったチームの流れをどこかで断ち切らないといけません。短期決戦は勢いに勝るものなしと言われるくらい大事な要素です、その勢いをつけたチームは怖い存在です。
ファーストステージから勝ち進んできたチームを受け止めようとするとかなり難しい戦いになるはず。なのでヤクルトとしては守ろうとするのではなく、いかに勢いを押し返せるか。その強さが必要になります。
──一方でレギュレーションではヤクルトがかなり有利です。
1勝のアドバンテージや日程面、本拠地で試合ができるなど、アドバンテージはかなりあります。だからこそ、下から勝ち進んだチームは、ファイナルの1戦目を絶対に取らないといけません。そこで負けて、アドバンテージ含めて2敗となるとかなり厳しい戦いになります。
一方でヤクルトも、相手の勢いを崩そうと1戦目を取りにいくはず。しかしそこで負けたとしてもまだ勝敗は五分ですから、それほど焦りはないでしょう。実際には2戦目までで1つ勝とうという考えでも大丈夫です。なので、「1戦目を取りに行こう」と選手たちに伝えていたとしても、心の中では「2試合で1つで十分だ」と思っているでしょう。
令和の三冠王・村上宗隆の復調は?
(C)球団提供
──そのCSファイナルでも注目を集めそうなのが、令和の三冠王・村上宗隆選手です。シーズン終盤は少し成績を落とした印象でしたが、秦さんから見るとどういうところに原因があったのでしょうか?
村上選手の良さはチームのためのバッティングができること。しかし優勝が決まって、個人成績を考え出した結果、少し打撃を崩したのかなと思います。
ホームランへの意識が高まると、どうしても引っ張ろうとしてしまう。それが力みになっているように見えました。バッターにとって最大の敵は力みです。力んでも100m飛ばせていた打球が120mになることはありません。それでも力んでしまう。あの大谷翔平選手も春先に同じような状況になりました。引っ張り意識が強すぎると力みが出て、セカンドゴロ、ファーストフライ、ライトフライになってしまう。
村上選手も飛ばそうという意識が強く、それが力みになり、体の開きが早くなる。それではインパクトの瞬間に力が加わらない。相手投手の攻めも四球が多くなり、それにイライラしている部分もあるでしょう。さまざまな要因が力みにつながっているのだと思います。
──シーズンが終わり一度リセットしてCSに臨みますが、そこでまた復活する可能性は?
もちろんありますよ。今度は目標が日本シリーズに向くので、またチームを考えたバッティングに戻る。そうなれば力みは自然と取れるでしょう。シーズン終盤はもう優勝が決まっていて、三冠王やホームラン数などの個人成績に意識が向いていたと思います。
──となると、CSファイナルのキーマンはやはり村上選手ですか?
村上選手が打てば、チームに勢いが付きます。一方で、相手チームも村上選手のことを相当に研究して試合に臨むはずです。なので、ヤクルトのカギは、村上選手が抑えられた時に、誰が出てくるかと言うところです。
日本一になるチームは、日替わりヒーローが出てくる。セ・リーグ優勝を決めたシーンも丸山和郁選手が、史上初の新人選手によるサヨナラでの優勝決定打となりました。もちろん、村上選手が打つことも大事ですが、彼が抑えられた時に出てくる脇役選手の活躍は注目ポイントだと思います。
──投手でカギを握る選手は?
ヤクルトは優勝しましたが、先発陣で抜きに出ている選手はいなかったと思います。そのなかで、個人的にはベテランの投球を楽しみにしています。まだ32歳ですが小川泰弘はベテランの域に入っていますし、何よりも石川雅規投手ですね。彼らがこの舞台で、味のある投球を見せてくれるでしょう。
また、今季のヤクルトといえば中継ぎ陣です。成長株の木澤尚文投手、圧倒的な成績を残した清水昇投手など磐石の中継ぎ陣がレギュラーシーズンのような投球ができるかは気になりますね。先発が打たれても、中継ぎが踏ん張ってチームに流れを引き込む。レギュラーシーズンのような戦いができれば強いでしょうね。
──セ・リーグ2連覇のヤクルトに死角なしといったところでしょうか?
アドバンテージを考えてもヤクルトが有利でしょう。さらに高津監督のマネジメント力も素晴らしい。ヤクルトが日本シリーズに行くと思っています。ただ、最後の最後でクライマックスシリーズに滑り込んだ阪神も、横浜DeNAベイスターズに勝利して勢いがあります。どのような結果になっても、印象的な試合になると思います。最終的には、ここ数年でしっかりと底上げができているヤクルトが勝ち進むと思います。
インタビュー= 川嶋正隆
1986年5月9日生まれ、福岡県福岡市出身。大学卒業後に携帯サイト『超ワールドサッカー』でライター兼編集者として勤務。2018年からフリーライターとしての活動を開始し、2020年からは念願かなってDAZN NEWSでプロ野球を担当している。
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