近年では珍しい、不透明な「開幕一軍」の陣容
長年ホークスを取材しているが、こんな年も珍しい。ペナント開幕まで1週間を切っても、「開幕一軍」の陣容がはっきり見えてこないのだ。
投打いずれも、である。野手の方はまだ分からなくもない。WBCに近藤健介、甲斐拓也、牧原大成、周東佑京と4人も出場していた。23日に帰国したがコンディションを整えることを優先してオープン戦の出場はなし。なかでも近藤は新戦力で、ホークスでも主軸を担うことが当然期待されるが、どの打順にハマるのか不透明だ。2023年型の攻撃布陣は開幕後に明らかとなるだろう。
ただ、投手の方は侍ジャパン選出ゼロだった。モイネロがキューバ代表として本大会に出場していたが、この最強リリーバーに関しての今季起用法は明確となっている。昨季は抑えを任されたが、ロッテからオスナを獲得したことで、かつての「8回の男」のポジションに戻ることになっている。しかし、キューバ代表もWBCではベスト4と健闘したこともあり、モイネロの来日が遅れている。藤本博史監督はオープン戦終盤だった25日の時点で「間に合わないでしょ」と開幕アウトを示唆した。
来日後はウエスタン戦などでの調整を経てから一軍昇格となる見込み。それまでの「8回の男」について、藤本監督は「今いるメンバー。誰という名前は出てこないですが」と前置きしたうえで5人の名前を次々に挙げた。
松本裕樹、又吉克樹、津森宥紀、嘉弥真新也、泉圭輔である。「この辺の状態の良い選手が7、8回を行くことになるんじゃないですか」と話し、状態を見極めて日替わりセットアッパーで戦っていく方針のようだ。
しばらくの間は“しのぐ”戦いを強いられることを覚悟しなければならないだろう。そうならないためにも打線の奮起に期待したいのはもちろんのこと、先発投手陣が長いイニング踏ん張るかも重要となる。
開幕ローテーションは最後の1枠に誰が入るか
(C)産経新聞社
開幕ローテについても、すんなりと6人全員は決まらなかった。
開幕投手についても藤本監督はもともと春季キャンプ第3クールに発表すると話していたが、延期、再延期となり当初の予定から1週間ほど遅れた2月21日に大関友久に託すことが発表された。
プロ4年目の育成出身左腕の抜てきに驚く声も上がったが、斉藤和巳一軍投手コーチを取材すると「自分はキャンプ前からアリやと思っていました」ときっぱり。大関のピッチャーとしての実力はもちろん、自発的に練習や研究に取り組む姿勢も首脳陣は高く評価したようだった。
大関はオープン戦3試合に投げて2勝0敗、防御率1.29とその大役に恥じない投球を見せた。特に最終調整登板となった24日の広島戦(PayPayドーム)は5回ノーヒッターと完ぺき過ぎるほどの仕上げ。「本番のつもりでいった。いい形でまとまってくれた。ストレートが外野の後ろに飛ばされていない時は調子が良い時。開幕戦でも続けていきたい」とコメントも力強かった。
大関から始まる開幕ローテーションは、藤井皓哉、東浜巨までが最初の3連戦。そして2カード目が石川柊太、和田毅まで決定し、もう1人がオープン戦終了時点でもまだ「当確」が出ていない。
6人目の男は、22日のウエスタン・阪神戦(鳴尾浜)で7回69球、1安打無四球で無失点と快投した板東湧梧が一歩リード。その翌日に組まれていたウエスタン・阪神戦で有原航平とガンケルの新戦力コンビが登板予定だったが雨天中止となり、アピール機会を逃してしまった。
有原はオープン戦2試合登板で防御率10.29、ガンケルは同6.00と結果を残せていなかった。有原については上り調子に見えたが、板東のアピールは無視できないのではなかろうか。
このほかにも高橋礼や武田翔太も開幕ローテ候補には名前が挙がっていた。
「千賀の穴」の不安もどこ吹く風。「先発ローテの座」を争う熾烈な競争へ
(C)産経新聞社
そもそも、今年のホークス先発陣は「千賀の穴」が不安視されていたはずだ。だが、蓋を開けてみれば「先発ローテの座」というイス取り合戦はし烈を極めた。斉藤コーチは「周りのみんなはそんなふうに言うけど、僕は初めから心配してないですね。十分埋められるだけのピッチャーがいます」と言いきっていた。
そのうえでこのようにも話す。
「長いシーズンを6人だけではやっていけません。8~9人くらいの先発を抱えておかないといけないかなと思っています」
開幕ローテに入った和田、そして今季から先発転向した藤井については中6日でずっと回していくよりも、登板間隔を空けながら1年間起用する方針がチームの中にあるようだ。逆に言えば、それをやれるだけの先発陣の層をホークスが持っていると表現できる。
野球は点取りゲームだが、ペナントを優位に戦うチームは安定感がカギを握る。その安定感を生むのはやはり投手力だ。
また、昨季は12球団ワーストの474与四球。1試合平均3.3個も与えていたことになり、パ・リーグで一番少なかったオリックスの375与四球と比較すれば、その差は歴然だった。今春のオープン戦は18試合で29与四球。1試合平均1.6個と大きく改善しているのは好材料だ。
文・ 田尻耕太郎
1978年生まれ、熊本市出身。法政大学卒。ホークス球団誌の編集を経て、2004年夏にフリーに。一貫して「タカ番」スタイルの現場主義を大切に取材活動を続けており、2021年にちょうど20年目のシーズンを迎えた。「Number」など雑誌・ウェブ媒体への執筆のほか、ラジオ出演やデイリースポーツ特約記者も務める。
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