今、巨人の中で最も旬な投手かもしれない。189センチの長身から投げ下ろす最速153キロの直球と落差の大きいフォークを武器とする、ドラフト3位・田中千晴(22)=国学院大=。25日から今季初めて甲子園を舞台にした阪神3連戦が行われる。大阪・堺市生まれの右腕にとっては幼い頃から親しみのある球場。声出し応援が解禁されたことにより完全アウェーの雰囲気が高まること間違いないが、肝っ玉ルーキーなら必ず虎を退治できる。
開幕2軍スタートから4月13日に1軍初昇格を果たし、登板3試合目の19日・DeNA戦(佐賀)でプロ初ホールドを記録。試合後に「いや~重たいですね。1ホールドずつ重ねていくのって。やっぱり先輩方すごいなと終わってから思いました」と初々しく余韻に浸っていた青年だったが、2ホールド目を手にした22日・ヤクルト戦(神宮)の試合後の顔を見ると少し違っていた。もう勝負師の空気をまとっていた。
「いつもですけど、ちゃんと準備して自分のボールを投げるだけなので」。2点リードの8回から3番手でマウンドに上がり、先頭のサンタナは見逃し三振。昨季の3冠王・村上も低め直球で空振り三振に斬り、オスナも左飛に打ち取って勝利を呼び込んだ。「ここからが難しいと僕は思っています。まだ初対戦でバッターも分かっていないということもあると思うので、ここから難しくなってくると思います」。相手が研究を始めれば、簡単に抑えられない。喜びより、今後への危機感の方が強かった。
それでも、自信はある。
今春キャンプは2軍スタート。当初は即戦力という立場ではなかったように思うが、短期間でグングン成長していった。3月19日の日本ハムとのオープン戦(東京ドーム)で1軍デビュー。1点ビハインドの6回からリリーフ登板し、1イニングを無安打無失点に抑えた。「僕のボールがちゃんと1軍で通用するんだと思いました」。そう振り返った背番号48は自信の要因を明かしてくれた。
「キャンプ中に体を大きくしようとしたわけじゃないんですけど、ウエートトレーニングにしっかり取り組もうと思ったら、体重が4キロくらい増えてフォームが安定するようになってきました。体重は86キロから90前後くらいまで増えましたね。人生で一番重いくらいで。だんだん感覚と自分の体を動かす感じが合ってきたところですね」
開幕前に2軍に合流し、ジャイアンツ球場で将来を見据えた上での先発調整を始めてから約2週間。1軍から中継ぎの一員としてお呼びが掛かった。セットアッパー候補のロペスが不振で2軍調整中。腰痛からの復活を目指す中川もまだ実戦復帰していない。そんな中で原監督は「あれだけの腕の振り、真っ向から投げる、そして決め球も持っている。可能性はうんとあると思います」と強心臓ルーキーの将来性を高く評価し、現在3試合連続で勝ちパターンの8回に登板させている。
昨年末。田中千は、小学校時代に所属していた新檜尾台(しんひのおだい)少年野球部のOBソフトボール大会にゲスト参加した。かわいい現役の後輩たちと交流する中で「ここからでもプロにいけるんや…とかね。この子供たちに夢を与えられればいいなと思います。僕はそのために野球をやっていると思います。この子供たちからプロ野球選手とか、野球でご飯を食べていけるような人が出て、その子供たちから下の世代につながっていければ、すごくいいなと思います」とプロとして決意をしていた。
もしかすると、あの時の少年少女が25日からの阪神3連戦で聖地を訪れるかもしれない。力はみなぎる。
文・中野雄太(スポーツ報知)
1990年5月17日生まれ。32歳。静岡県静岡市出身。2022年に報知新聞社に入社。同年11月から巨人担当。
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