5月30日に日本生命セ・パ交流戦2023が開幕する。2021年の交流戦では、パ・リーグで負け越していたオリックス・バファローズが優勝。その勢いのままに後半戦のペナントレースも勝ち進み、パ・リーグを制覇した。昨年は、交流戦前からセ・リーグ首位に立っていた東京ヤクルトスワローズが2度目の優勝を飾る。10の貯金を作ったことでその後のペナントレースも優位に戦い、セ・リーグ連覇を飾った。
ペナント優勝に向けても大事な交流戦。DAZNで解説を務める飯田哲也氏に、今季の戦いを展望してもらった。
※インタビューは5月23日に実施
短期決戦で欠かせないリードオフマンの積極性
──5月30日から日本生命セ・パ交流戦が始まります。交流戦を境にチーム状況がガラッと変わる印象がありますが、それはなぜでしょうか?
雰囲気が全く違うので、今まで調子が悪くてもリセットして新鮮な雰囲気で試合に臨むことができます。切り替えがしやすいですし、シーズンを通して1カードだけの対戦なので気合も入るでしょう。新たな気持ちで交流戦を迎えるので、これまでの調子や結果はあまり関係ないと思います。
ただ、短期決戦なので序盤で躓くとずるずるいってしまう可能性もある。初戦の入り方は、その後の戦いに大きく影響します。
──交流戦といえば長くパ・リーグが結果を残してきましたが、この2年はセ・リーグが勝ち越しています。そこに何か要因はありますか?
パ・リーグに力のある投手が多くいるなかで、セ・リーグの打者はしっかりと打ち返している。これはすごいことだと思います。ただ、年に1回しか対戦しないので、山本由伸や佐々木朗希のことをそれほど怖がっていないのかもしれません。
パ・リーグだと年に何回も手強い相手と対戦しますよね? 対戦するたびにやられていると「また山本かよ」と思うでしょう。でもセ・リーグは1回対戦するかしないか。ローテーションの関係で対戦しなければラッキーですし、対戦するとしても「怖さ」や「嫌だな」という思いよりも「打って活躍してやる」という思いが強い。逆に対戦が楽しみなのかもしれません。それが結果にもつながっているのかなと。
──普段とは違う交流戦ですが、どのような部分に難しさがあるのでしょうか?
セ・リーグに関しては普段通りの戦いができるでしょう。一方でパ・リーグの場合は、投手がバッターボックスに入るので慣れていない戦いをしなければいけません。それは投手起用にも影響が出ます。チャンスで投手に打席が回ってきたら、代打を出すでしょう。思っていたよりも早めに投手を交代させる場面が出てきます。だからこそ、計算できる中継ぎ投手が多いチームが有利です。
──この交流戦を勝ち抜くために必要なこととは?
ペナントでも同じですが、カード頭をしっかり取ることが大事です。どのチームも勝ち越しを目指して戦うなかで、初戦の重要度はかなり大きい。どのチームもカード頭には力がある投手を持ってくるはずなので、そこをどう攻略できるかが交流戦を乗り越えるカギになるでしょう。
──初戦を取ることでチームも勢いに乗れます。大事なカード頭を取る上で1番打者の役割は非常に大きいように思います。現役時代にリードオフマンとして活躍された飯田さんが思う、1番打者に必要な要素は?
チームに勢いを与えることが一番大事です。そのために、リードオフマンは「出塁率」「打率」「走塁」の3つが大事だと思っています。結果的に、1番打者が先頭で迎えるシーンは初回だけです。ただ、その初回が非常に大事。そこでチームに流れを持ってこれるかどうかで、その後の試合の流れが大きく変わります。
個人的には初球から積極的な姿勢を見せてほしいですね。初球に手を出してアウトになれば勢いを持ってこれないので、そこを怖がって球を見るバッターが多いですが、積極的に振ってくるバッターの方が怖い。僕もそういうバッターだったので、積極的に振ってくる選手の方が好きですね。
──短期決戦だからこそ、1番打者の積極性が大事になってくる?
普段のリーグ戦でも同じだと思います。どのチームもクリーンナップは固定していますが、1番打者は固定していないチームもいます。私はクリーンアップと同じようにリードオフマンもチームの軸だと思うので、固定する方がいいと思いますね。
注目はヤクルト・塩見泰隆、ソフトバンク・牧原大成
──飯田さんから見て気になるリードオフマンはいらっしゃいますか?
ヤクルトのOBなので塩見泰隆はよく見ていますし、好きなタイプのバッターです。塩見が怪我から戻ってきて、ヤクルトはようやく戦力が整ってきた。塩見自身がこの交流戦でどういったバッティングをしてくれるかも楽しみですし、それによってチームがどう変わるかも楽しみです。
──塩見選手といえば、セ・リーグを連覇したヤクルト打線のキーマンだと思います。飯田さんから見て、塩見選手の良さは?
思い切りの良さです。どんどん振っていくタイプで、長打力もありながら足も使える。理想的な1番打者だと思いますね。今のヤクルトは調子が良くないですが、昨年の交流戦王者です。塩見自身もこのタイミングで戻ってきて、交流戦で本調子を見せてくれたら、ここから一気に復調する可能性もあります。
今までの戦いを見ても、1番打者が決まらないことで苦しんでいる印象でした。1番打者がしっかり出塁することで、調子がいいオスナやサンタナにいい状況で打席を回せる。塩見の復活はチームに良い影響を与えてくれるでしょう。
──そのほかに気になる打者は?
ホークスの牧原大成ですね。怪我から戻ってくるはずですが、私はホークスの1番は牧原がいいと思っています。彼も積極的なバッターですし、足もある。打撃も年々良くなっていますし、出塁率も上がっている。今のホークスは点が取れないので、牧原にかき回してほしいですね。
──今のソフトバンクは中村晃選手が1番打者を任されています。出塁率を考えるとかなり貢献しているのでは?
選球眼がいいので出塁率は高いですが、1番打者としては足が物足りない。それに中村は勝負強いバッターなので、ポイントゲッターとして起用する方がいいでしょう。もちろん牧原もポイントゲッターとしての力もありますが、あの足を考えると今のホークスなら1番打者での起用が最適ですね。
周東佑京もいますが、良さを生かしきれていない。あれだけ足が速いんだからもっと転がす打球を打てばいいのに、三振やフライが多い。本当の理想は周東が1番打者に入ることですが、まだまだ物足りないですね。
──ソフトバンクのように出塁率を重視した1番打者といえば、DeNAの佐野恵太もいます。
佐野も中村と同じで、出塁率はいいですが足の部分でイマイチ。ただ、今のDeNA打線はクリーンアップの調子がいいからこそ、佐野の起用に困っているのかなと。桑原将志が調子がいいので、桑原が1番、関根大気が2番などは面白い打線になると思います。ただ、今のDeNAはどんな打順を組んでも強いですよ。
──そのほか阪神の近本光司選手も1番打者として、首位チームを牽引しています。
岡田彰布監督に代わって1番良さが出ている部分は、選手の固定起用です。ポジションの固定もですが、打順に関しても軸をしっかりと作っています。その中で1番・近本もイキイキとプレーしてますよね。
1番と3番では役割が違う。今年の近本は1番で固定されることで、塁に出ることを求められています。それをしっかりと体現できていますね。打てる、走れるでチームに勢いを持ってきているバッターだと思います。ミスも少ないですし、相手にとっては嫌な選手ですね。
──パ・リーグの1番打者たちはどうでしょう?
パ・リーグは1番打者を固定していないチームが多く、流動的な起用が目立ちますね。その中でもオリックスの茶野篤政は楽しみです。育成から上がってきて1年目から活躍していますし、先日は1番打者も務めました。しつこいし、勝負強いし、足も速い。今はとにかく必死にプレーしていて、そういう姿も好印象ですね。これからの活躍が楽しみです。
──各チームに気になる1番打者がいますが、今回の交流戦で気になる対戦はありますか?
塩見対パ・リーグのエース級との対戦戦ですね。山本や佐々木と対戦することがあれば、そこでどういうプレーを見せてくれるか。WBCで活躍したような投手から打つと自信もつく。塩見自身が調子を上げていくためにも、パ・リーグの力強い投手からしっかりと打ってほしいですね。
ただ、この交流戦の見どころはセ・リーグの打者がパ・リーグの投手を打てるか。特に山本や佐々木という好投手に対して、好調のDeNA打線や勢いある阪神打線との対戦は見逃せないと思います。
インタビュー= 川嶋正隆
1986年5月9日生まれ、福岡県福岡市出身。大学卒業後に携帯サイト『超ワールドサッカー』でライター兼編集者として勤務。2018年からフリーライターとしての活動を開始し、2020年からは念願かなってDAZN NEWSでプロ野球を担当している。
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