3年目右腕・入江大生投手がDeNAの好調リリーフ陣を支えている。リードの場面はもちろん、時には流れを変えリズムを作り直したいビハインドのゲームでも、マウンドに向かう。体勢を低く保ち、捕手のサインをのぞき込み、狙いを定める。捕手のミットめがけて勢いのあるストレートを投げ込む。今季はオールスターブレイクまでに25試合に登板して、1勝1敗7ホールド、防御率1.90とチームになくてはならない存在となっている。
球宴までの「前半戦」を終えてチームは3位につけていた。リリーフ陣が万全だったわけではない。昨季まで5年連続50試合超登板の鉄腕・エスコバーが精彩を欠きファーム降格したかと思えば、7月に入って守護神・山崎が20セーブを挙げながら、6敗目を喫して、中継ぎに降格となった。
「ブルペン陣のリーダーとして引っ張てくれていた(山崎)康晃さんが今季はちょっと歯車が合わないところもあって。もちろん先頭に立って、今も引っ張っていただいているんですけど。いつもブルペンでいい雰囲気をつくってくださっていて。そのリーダーのヤスさんが、クローザーを(外れる)、というのは耳にして。ヤスさんにはそれは言ってないんですけど、(リリーフ陣の中で)僕たちで頑張ろうという話はしました」
25年ぶりの頂点を目指して厳しい戦いが続く中でも、入江の役割は変わらず、1軍ブルペンを支え続けている。
元々は先発だったが、昨年2月のキャンプ後半に三浦大輔監督からリリーフ転向を打診された。「球の質、もろもろを考えてリリーフの方が力を発揮できる」という指揮官の見立てだった。牧秀悟と同期の20年ドラフト1位右腕。新人特別賞を受賞した牧と違い、1年目は4試合に登板して4連敗と振るわなかったが「(リリーフで)腹をくくって覚悟できる。よしやってやるぞと。本当にシンプルな気持ち」と気持ちを切り替えてシーズンを戦った。57試合に登板して、5勝1敗10ホールド、防御率3.00と2年目に大きく飛躍を遂げた。伊勢、山崎へつなぐ勝ちパターンで登板を重ねてチーム2位に貢献した。
日本中が沸いた歴史的な一戦のマウンド上にいたのも入江だった。22年シーズン最終戦となった10月3日のヤクルト戦(神宮)で村上に56号を放たれた。「いろんな形で記録を残せて良かったなと思う。今後もしかしたら30、40年塗り替えられなかったら流れる映像。孫とかできた時にコレを打たれたのはおじいちゃんだぞと言える」。
悔しさを胸にしまい、歴史的一撃を食らっても、シーズン終了後に笑い飛ばず余裕があった。オフにはオーストラリアのウインターリーグへ。「長く野球をやっていきたい。自分に足りないことを徹底的につぶしにいく」と武者修行しながら腕を磨いた。
リリーフとして迎える2年目のシーズン。さらなる活躍を求められる年でもある。ブルペンの先頭を引っ張ってきた投手キャプテン・山崎の後ろ姿を見てきた。「身を削って投げている姿を近いところで見てきた。それでもまた、きっと戻ってきてくれると思う」と話しながら、口元を引き締めて続けた。「いつかは追い越せるように」と決意を口にした。
後半戦最初の登板となった7月23日・巨人戦(横浜スタジアム)では4点ビハインドの場面で8回に登板。マウンドから飛び出していきそうなほどの勢いで、最速155キロの直球を投げ込んだ。いとも簡単に打者3人で仕留めて、当たり前といった涼しい顔で一塁ベンチに戻った。
終盤の優勝争いに必要不可欠な存在となった入江が、マウンドでチームの勝利のために腕を振り続ける。
文・宮田和紀(スポーツ報知)
1976年10月5日生まれ。46歳。大阪府出身。1999年に報知新聞社に入社。2022年からDeNA担当。
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