16日の広島戦（マツダ）に勝利し”アレ（優勝）”へのマジックが点灯した阪神。先発とリリーフ陣の安定感に加え、打線は1、2番の近本＆中野の「チカナカコンビ」、4番に座る大山に加え、ルーキー・森下の存在感が光る。7月25日の巨人戦（甲子園）から3番に座ると、ここぞの場面で一打が生まれている。
17日の時点で3番では20試合に出場し、打率は3割2厘。3本塁打、15打点と十分すぎるほどの成績だ。岡田監督も、森下の3番起用はキャンプ中から理想に掲げていたプランで「半年たってようやく実現したよ」とニヤリ。クリーンアップを任されたことを森下も意気に感じており「前にも後ろにもいいバッターがたくさんいる。自分はしっかり、自分らしいプレーっていうのを意識してやっているだけなので」と先輩たちに支えられ、伸び伸びとしている。
18日から始まる敵地でのDeNA3連戦。横浜スタジアムは昨年から13連敗中と”鬼門“ではあったが、4～6日の前カードで3連勝を飾った。神奈川県は森下の地元でもあり、同球場は東海大相模時代に甲子園出場を決める県大会の決勝戦でプレーした思い出の場所でもある。
高校時代の森下は1年春からレギュラーとして活躍し、スーパー1年生として注目された。通算本塁打も57本とパワーが魅力的だった。ただ、当時は物事を真正面から受け止めてしまう性格。3年春のセンバツでは注目選手として周囲から期待される中だったが、力みが見え結果は4試合で4安打。準決勝で敗れてしまった。
当時からプロの世界を目指していた森下は人間的にも技術面でも成長できるようにと、当時の門馬敬治監督（現創志学園監督）の勧めもあり大学進学を決意。中大へ進んだ。そこで出会ったのは、現在DeNAで４番を務める牧。2学年上の先輩である牧の背中を追いかけ、練習もよく共にしていたという。
甲子園や横浜スタジアムの試合前練習でもいつも二人でじゃれ合う姿を見つける。何か会話をしたのかと聞いても「大学時代と変わらない、いつもと同じふざけた感じです」とおどけて笑う。その笑顔からは本当に牧を尊敬し、心を許しているのだというのが伝わってくる。プロ野球の世界に入っても、追いかけ続ける背中は変わらない。「一緒に侍ジャパン、オールスターに選出されるような選手になりたい」と、代表戦などで共にプレーできることを夢見て、まずは結果を残そうと懸命に一戦一戦を過ごしている。
DeNA相手に打率2割6分5厘、1本塁打、18打点をマークしており、広島の次に得意としているチームだ。20日はバウアーが先発予定。助っ人相手には甲子園で行われた7月12日の試合、2点ビハインドの8回無死一塁で152キロを左中間へ放り込み同点に追いついた。その後、4―4の9回1死満塁でウェンデルケンから決勝の中犠飛を放ち試合を決めた。サイ・ヤング賞右腕を受賞したバウアーから敗戦ムードを払拭する値千金の一発を放ち「甘い球に対して積極的にスイングしたことがいい結果につながった。自信になります」と胸を張った。敵地では打率2割2分2厘、0本塁打、1打点とまずまずの結果。地元で歓声も多いだけに、どでかい一発も期待したいところだ。
甲子園球場が使えず、遠征が続く長期ロードも後半にさしかかってきた。初のロードに「ファンの声援が後押しとなって勝てている」と森下。暑い中でも過去に夏バテは一切なし。食事面では3食以上とることを心がけ「炭水化物はエネルギーになるので、よく食べるようにしている」と、試合中もパンやおにぎりを口にする。自分自身のコンディションとしっかり向き合い調整していることが結果にもつながっている。若さあふれるルーキーのプレーに注目だ。
文・玉寄穂波（スポーツ報知）
1993年11月12日生まれ。29歳。大阪府和泉市出身。2016年に報知新聞社に入社。巨人担当、遊軍を経て2023年から阪神担当
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