実に有意義な90分だった。
試合前の状況を整理すれば、川崎フロンターレは3人の主力が代表に呼ばれていたが、シーズン中とあってコンディションは上々。一方のPSGはプレシーズンでコンディションもそこそこ。加えて、新監督を据えてチーム作りをしている真っ最中と、同等の条件でないことはもとから承知の上である。
それでもPSGはメッシやムバッペ、ネイマールらが揃い踏み。そういった相手にどれだけの力を示せるかという意味では価値ある試合となった。
結果は1-2。勝利を目指していたことを考えれば、悔しい敗戦だ。ただ、やはり学ぶべきことが多い90分と捉えるのが的を得ている。より厳しい条件で戦ったスーパースター軍団は、要所で技術力の高さや個人戦術の凄みを発揮。狭いエリアでも個で突破したり、コンビネーションで崩したりと確かな違いを示してきた。
もちろん川崎Fが対抗する時間帯もあった。それでも90分を通して見れば、劣勢の時間が多くを占めていたことは疑いようのない事実である。試合後、鬼木達監督はPSGとの差をこう表現した。
「力の差は非常にあったと思います。パリ(・サン=ジェルマン)は相手を見てサッカーをやれるなと。そのことによって自分たちが足を止められるというか、動けなくなる時間が多かったです。変化を起こせるパスだけではなく、ドリブルも含めて相手の嫌なところへボールを運んでいく。単純にワンツーであったり、背後へ走ることであったり、点を取りにいくときのそういったものは改めて勉強になりました」
相手を見てサッカーをするという点では、前半のヴィティーニャの動きがわかりやすかった。最初はダブルボランチでスタートしたが、ビルドアップにプレッシャーがかかっていることを見ると、少しポジションを前に上げて、前線の受けどころを増やす作業をしてきた。この動きによって川崎Fにマークのズレが生じ、前線の3人にボールが多く入るようになった。こういったピッチ内で状況を解決する作業を瞬時にこなすのはPSGの凄みと言えよう。
また、個の力の差も明確に出た。中盤に入った橘田健人が「パスした後の入っていくスピードが桁違いに違った。出して動くを究極に極めた人たち」と話せば、好セーブを連発したチョン・ソンリョンは「シュートするまでのタイミング、連携プレーもすごく正確だった」と表現。一つひとつのプレーの質で相手が優位に立っていたことは間違いない。
「相手を見てやることはもちろん、攻撃でも守備でも自信を持ってやっているときは自分たちの時間になる。そうでないときはゴール前に釘付けにされます。強気でやれるかどうかというところと、単純にワンツーや最後GKに対して2対1を作るなど、そこの迫力のところを高めていきたいです」(鬼木監督)
世界トップレベルのPSGと対戦することで多くのことを感じたはずだ。この試合で得た経験と自信を今後のリーグ戦に生かしていくことで、3連覇への道を切り拓いていきたい。
文・林遼平
埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。
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