■改革元年。“新しい浦和”の構築へ
ここ数年とはまるで別のチームと言っていい。
昨季、14位に終わった浦和レッズのことだ。5バックを敷いてゴール前を固め、得点はFW興梠慎三頼み――そんな弱腰の姿勢は過去の話。慣れ親しんだ3-4-2-1に別れを告げ、今季は4-4-2にシステムを変更。ソリッドな守備、コレクティブな速攻、リズミカルなボール保持に磨きを掛けている。
チームを率いるのは、“組長”こと大槻毅監督だ。就任3年目だが、プレシーズンから指揮を執るのはこれが初めて。18年の就任は堀孝史監督が4月2日に解任。オズワルド・オリヴェイラ監督が4月末に就任するまでの“中継ぎ”的な役割だった。
昨季もオズワルド・オリヴェイラ監督が5月28日に解任され、“リリーフ”として就任。立て直す時間は十分あったが、ACLで決勝まで勝ち進んだため、大きな変更を打ち出せないままシーズンを終えた。
「3年計画で、土台を作り直すとクラブは明言しています。その1年目を任されたということは非常に大きな責任だと思っている。選手が思い切って戦えるように、選手が表現できるように、十分な仕組みを作りたいと思っています」
リーグ中断に入る前、大槻監督はきっぱりと言った。昨年12月に強化体制が見直され、クラブOBの土田尚史氏がスポーツダイレクター、西野努氏がテクニカルダイレクターに就任した。現場も刷新されてもおかしくないなか、自身の続投が決まったことの意味を、大槻監督は理解している。それゆえ今季、“新しい浦和”を作るべく、改革に着手した。
■システム変更で繰り広げられる熾烈なポジション争い
最も大きな変化は、1トップから2トップへの変更だろう。そこには、近年の大きな課題だった“興梠の孤立問題”を解消させたい、という思惑が透けて見える。興梠慎三のパートナー最右翼は、アルビレックス新潟から獲得したFWレオナルドだ。右足、左足、頭と多彩な得点パターンを誇り、ルヴァンカップ・ベガルタ仙台戦(○5-2)で2ゴール、J1開幕戦の湘南ベルマーレ戦(○3-2)でも1ゴールと、早くもポテンシャルを見せつけている。
控えメンバーも強烈だ。FW杉本健勇、FW武藤雄樹、FWファブリシオ、MF武富孝介……と他クラブならレギュラーでもおかしくない顔ぶれが興梠、レオナルドと熾烈なポジション争いを繰り広げている。今季は過密日程となるため、ローテーションしながら回していくことも十分考えられる。
充実するFW陣に、いかにチャンスボールを供給するか。その点においてもぬかりはない。中央から、左から、右から、とチャンス創出のルートをしっかり確保している。中央攻略のキーマンは、ボランチを務めるMF柏木陽介だ。昨季はシャドーに入ることが多かったが、今季は1列下がってゲームを組み立てながら、得意の“タッチダウンパス”で相手DFの背後を狙う。
右サイドからは、21歳の若武者DF橋岡大樹が成長著しいクロスで援護射撃。その前に位置取るMF関根貴大は今季、プレーの幅を広げている。ウイングバックだったこれまでは縦の仕掛け一辺倒だったが、サイドハーフの今季はインサイドに潜り込み、際どいスルーパスを連発しているのだ。おそらく相手守備陣は関根のポジショニングに混乱させられるに違いない。
左サイドはMF汰木康也とDF山中亮輔のコンビが巧みにレーンを使い分け、チャンスを生み出す。仙台戦で生まれたゴールは理想的だった。左サイドで汰木がボールを持つと、山中は内側のレーンを一気に駆け抜け、ペナルティエリアの手前に走り込む。そこへ汰木がパスを流し込むと、山中がゴール前のレオナルドへラストパスを届けた。流れるようなショートカウンターの成立に、汰木も手ごたえを掴んでいた。
「完璧でしたね。めちゃめちゃ綺麗だった。ああいう形はキャンプでもたくさん作っていて、逆に自分が追い越していくパターンもある。今季は左サイドがストロングポイントになるように、やっていきたい」
ポジション争いが熾烈なのは、前線だけではない。センターバック争いも強烈だ。仙台戦、湘南戦ではDF岩波拓也、DF鈴木大輔のセットが起用され、日本代表のDF槙野智章が控えに回ったが、そこに2月に獲得したU-23オーストラリア代表キャプテンDFトーマス・デンが猛烈な勢いで食い込んできた。指揮官の評価もすこぶる高い。
「本当にチームに溶け込もうと努力しています。年齢は若いですけど、リーダーシップがありますし、何よりレッズでしっかりとパフォーマンスを見せたいんだ、という気持ちが伝わってくる」(大槻監督)
J1再開初戦の相手は、ディフェンディングチャンピオンの横浜F・マリノスだ。生まれ変わった浦和の力を試すには、これほどふさわしい相手もいない。そして、リーグ屈指の攻撃力を誇る相手に、ただガードを固めるつもりもない。「チームとして今季は攻撃的なサッカーを掲げている」と興梠は胸を張る。殴られたら殴り返す、エキサイティングな点の取り合いになること請け合いだ。
文・飯尾篤史
1975年生まれ。東京都出身。明治大学を卒業後、週刊サッカーダイジェストを経て2012年からフリーランスに。10年、14年、18年W杯、16年リオ五輪などを現地で取材。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』、『残心 中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』などがある。
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