明治安田生命J3リーグKONAMI 月間ベストゴール。6月度の受賞者は第13節・沼津戦でチームに5連勝をもたらす劇的ゴールを奪ったカターレ富山の大野。今年でプロ6年目を迎えるストライカーに、豪快ゴールの裏話やゴールへのこだわり、そして後半戦に懸ける思いなどを聞いた。(取材日:7月7日)
ーーこの度は、6月度の明治安田生命J3リーグ KONAMI月間ベストゴール受賞おめでとうございます。受賞した感想を聞かせてください。
個人賞をもらうのはプロになって初めてのことだったので嬉しかったです。クラブハウスでお昼ご飯を食べているときに広報の方から聞いて驚きました。
ーー今回、J3第13節・アスルクラロ沼津戦の90+2分のゴールがベストゴールに選ばれました。後方からのフィードを大野選手が競り合ってクリアされたこぼれ球を末木裕也選手がダイレクトで前方スペースにパス。そこに素早く大野選手が抜け出し、豪快に右足を振り抜きました。まずはこのゴールシーンを振り返って頂けますか?
最初に相手DFと競り合ったところは弾き返されてしまいましたが、そのこぼれ球を見たときに末木選手が勢いよく前へヘディングしようとしていたんです。裏のスペースにボールを出してくれると思って、そのまま素早く体の向きを作り直したことで、相手よりも先に反応できて裏を取れたんだと思います。ボールを蹴った瞬間はすごく気持ちよくインパクトできたので、打った瞬間に『入るな』と思いました。
ーー相手はオフサイドをアピールしていましたが、気になりませんでしたか?
『もしかしたらオフサイドかな』とは一瞬思いましたけど、ボールが出た瞬間に相手は正面を向いていて、僕は半身の体勢を取れていたので、大丈夫だと思いました。
ーーシュート打つ際にゴールを見ていなかったように見えました。
普段からこういう形は練習しているのでゴールは見ていなかったです。今季は『早い段階で打つ』ことを心がけているので、ちょっと早めにシュートモーションに入って足を振り抜くことを考えていました。多分、昨季までならあのタイミングでは打っていなかったと思いますし、もしワンタッチして余裕ができてしまったら、いろいろと考えてしまって逆に入っていなかったかもしれません。
(C)J.LEAGUE
ーー打った瞬間に『入る』と思ったということですが、キャリアの中でもベストゴールに近いですか?
これまで打った瞬間にコースを見ないでゴールを確信したことはなかったので、ベストゴールに近いかもしれません。試合終了間際の決勝点というシチュエーションやタイミング、あとは自分にとってはケガからの復帰初戦と、いろいろな要素が重なったこともありますし、これまでなかなかなかったゴールだと思いますね。あとは、ほとんど勝利を手繰り寄せるような一発だったので、とにかく嬉しかったです。
ーー先ほど、シュートを打つテンポの話があったと思いますが、意識を変化させようとした理由を教えてください。
昨季の反省点として、自分で一つ多く持ち運んでしまって相手に詰められて、シュートを打てないシーンが多くありました。その中、今季は川西翔太選手と2人でいろいろなシチュエーションでのシュート練習をやっていて、そこで早いタイミングで打つことが選択肢に入りました。あとは、GKに『どのタイミングで打たれたら反応しにくい?』と聞きながらやっていることもあって、あの場面ではとっさに足を振ることができましたね。
ーーFWとして理想のゴールや得意な得点パターンはありますか?
このゴールのようなきれいなボレーをバンバン打つようなタイプではないですね。相手の裏を取ってGKとの1対1とか、クロスに入っていって合わせるとか、そういうシュートは昔から得意にしていて強みだと思っています。
ーー元イタリア代表のフィリッポ・インザーギ選手を参考にしていると聞きました。
小さい頃からセリエAのゴール集を見ていて、F・インザーギ選手のゴールもよく見ていました。そんなにポゼッションには参加しないけど、相手DFと駆け引きをして、大事なところでひょこっと顔を出す感じがすごくストライカーらしくてかっこいいなと。動き出しの部分でも、何度も何度も体の向きを作り直したり、クロスに合わせることを狙っていたり、常にゴールを意識している姿勢をすごく参考にしています。
ーーもっと豪快なシュートを決める選手はたくさんいると思いますが、渋い選択ですね。
小さいときから、あまりドリブルとか細かい動きが得意ではなかったので、自然とそうなったのかもしれません(笑)。
ーーでは、ゴールを奪うために最もこだわっていることはどんなことですか?
どんなタイミングでも準備をしておくことです。試合中ももちろんですけど、いまは途中出場が多いので、試合に入るための準備もそうです。細かい準備は怠らないように意識しています。
(C)J.LEAGUE
ーー今季は出場した全試合が途中出場でモチベーションを保つには難しいこともあると想像します。
昨季の途中から途中出場が多くなり、最初は『難しいな』と思っていましたし、『スタメンで出て点を取りたい』と思っていました。ただ、チームが苦しいとき、しんどいときに投入されて、そこで結果を出せるようになってから、『それはそれで面白い』と思えるようになってきて、こういう生き方もありかなと思っていました。結局、チームの力になれているならば、スタメンとかベンチスタートとかにこだわりがなくなり、メンバーにさえ入っていれば、チャンスがあれば絶対に結果を残すというモチベーションでプレーできていますね。
ーーまさに今回のゴールのように“おいしいところ”を持っていける要素は多いですね。
沼津戦も一発は狙っていました(笑)。そうやって、最後の最後で決めればヒーローになれますし、そういう思いはモチベーションの一つにしてやっています。
ーー昨季は2ケタゴールまであと一歩の9ゴールで終わってしまった悔しさがあると思います。
2ケタゴールは一つの基準に置いています。やっぱり、9点と10点では周りの評価も大きく違うと思いますし、自分の中でもだいぶ違います。昨季は9ゴールまでいったあと、残り数試合でけっこう決定機があったんですけど、どこか『これを決めれば10点目』とちらついてしまったり、2ケタを意識し過ぎてしまったりしていました。とにかく今季はいろいろなシチュエーションでたくさんのシュート練習をして、また9点から10点に差し掛かるときに同じような気持ちが働かず無心でゴールを取れるようにしたいですね。2ケタゴールを取れる選手になりたいと思ってずっとプレーしているので、頑張りたいです。
ーー後半戦は、チームとしてはJ2昇格のため、大野選手としてはプロ初の2ケタゴールに向けて重要な試合が続いていくと思いますが、意気込みを聞かせてください。
まずはチームが昇格することが一番です。そのためにも後半戦に入って1試合、1試合、本当に厳しく難しい試合が待っていると思います。昨季はシーズン半分を過ぎてから失速し始めているので、同じことを繰り返さないように、内容が良くなくてもとにかく勝ち切ることが大事だと思っています。そのチームの目標の達成するためには絶対にFW陣が点を取って勢いを付けていかないといけないので、僕自身も2ケタゴールを目指しながら日々、練習していきたいです。
ーー大野選手が2ケタゴールを取れれば、チームのJ2昇格に自然と近づくと思います。
そうですね。最近の試合への関わり方を考えても、ゴールを決めれば決勝ゴールになることが多いと思うので、自分が結果を残すことはすごく考えています。もちろん、プレッシャーや緊張もありますけど、最終的に自分のゴールでJ2昇格ができればすごく嬉しいことなので常にゴールは狙っていきたいです。
文・インタビュー 須賀大輔
1991年生まれ、埼玉県出身。学生時代にサッカー専門新聞『ELGOLAZO』でアルバイトとして経験を積み、2016年からフリーライターとして活動。ELGOLAZOでは柏レイソルと横浜FCの担当記者を経て、現在はFC東京と大宮アルディージャの担当記者を務めている。
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