Jリーグが選ぶ7月度の明治安田生命J3リーグKONAMI月間MVPは藤枝の久保藤次郎。7月は2ゴール2アシストを記録し、7月全勝のチームを力強くけん引した。大卒ルーキーながら今季ここまで得点ランク4位タイの8得点。その活躍の理由とは? 目指す選手像とは? 藤枝の風雲児に話を聞いた。(文・田中 直希)※エル・ゴラッソ本誌より転載
得点には常にこだわっている
――7月のJ3・KONAMI月間MVPに選出されました。率直な感想はいかがですか?
「まさか自分が受賞できるとは…。素直に、めちゃくちゃうれしいです。中京大のときに(東海学生リーグ1部)得点王、ベスト11をいただいたことはあるのですが、こういう大きな規模のものは初めてです」
――7月は5試合で2ゴール2アシスト。昨季は特別指定選手としてプレーしましたが、プロ1年目でここまで8得点と結果を出しています。
「正直、自分としてはでき過ぎかなと思っているのですが、個人の結果はチームのためにプレーした結果だと思っています。この数字に関しては、自信に変えていければいいですね」
――自身が思う、好調の要因は?
「クラブの調子がよくないと、個人の結果もついてこないと思います。いまはチーム全員がピッチ上でそれぞれのパフォーマンスを出すことができているので、その流れに乗って自分も結果を出せているという感覚です」
――7月の試合の中で、印象に残っているプレーはありますか?
「(第19節・)鹿児島ユナイテッド戦(2○1)でのゴールは印象に残っています。その試合では、開始早々の2分に自分がマークしていた相手に点を奪われてしまいました。なんとか取り返そうと思っていたところで、(1-1に追い付いた状況で)惇さん(鈴木)がいいボールを出してくれました。最初は右足のワンタッチでシュートを打とうと思っていたのですが、相手のDFが食いついたところで切り返しがいいところに決まり、左足で冷静に決めることができました。あのときは、滑ってくる相手選手も見えていましたね」
――WBのポジションでプレーしながら8得点。攻撃で意識していることはありますか?
「もともとはWGをやっていました。いまも攻撃のときはWGのように高い位置をとっていいと、(須藤)監督から言われています。攻撃ではWGという意識ですね。攻撃で厚みを出すために、逆サイドにボールがあるときもワイドな位置にポジションをとるようにしています」
――サイドのポジションながら、フル出場も多いですよね。
「大学のときに(永冨裕也)監督から『献身的にプレーしろ』と言われ、走ることは強く意識してやっていました。そういうところが身になって、自分の武器になっていると思います。以前から長距離走は得意でしたね」
――得点に絡む場面が増えています。
「得点を取ることに関しては、常にこだわりをもってやっています。WGから一つポジションが下がってWBになったいまも、その考えは変わらず持ち続けていますね。常にゴール前に入っていくことを意識しています」
――プロになってから、自身の得点感覚が研ぎ澄まされていると感じますか?
「大学時代は、これからのサッカーではワンタッチゴールが大事になると思っていました。そう思いつつも、大学では自分で仕掛けてシュートを狙うことが多かったんです。実際にプロでプレーしてみると、個で相手をはがしてシュートというきれいなゴールはそんなに生まれないと気づきました。ゴールエリアに入っていく、こぼれ球を決めるといった、泥臭いゴールが増えてきています。ゴールへの嗅覚を研ぎ澄ませて、ゴール前でチャンスをモノにできるか。それにかかっていると思っています。監督からもゴール前に入っていく回数を増やすように言われています」
――久保選手は167cmと小柄ですが、だからこそ意識していることはありますか?
「一番いいのは、相手に当たらないくらい余裕をもってプレーすることですが、上のカテゴリーにいけば強い選手、速い選手がたくさんいます。いま意識しているのは筋トレです。当たり負けしない、強い体を作りたいと思っています。小さいですが、相手に勝ってやろうという思いでいます」
藤枝の“超攻撃”とは…
(C)J.LEAGUE
――藤枝はリーグ2位の得点力を誇っています。
「監督も『超攻撃的にいく』と言っています。試合を重ねるごとに点を取れる自信もついてきました。鹿児島戦で先制されたときも、ゴールは取れるだろうと思っていて、実際に逆転できました」
――「超攻撃的サッカー」をする上での意識を教えていただけますか。
「一番は戦うことです。目の前の相手に負けないことがチームの基盤になっていて、その中でしっかりとパスをつないでボールを保持しつつ、得点を取りにいく。1点では満足できない。何点取ろうが守りに入ることなくゴールを取りにいくのが、自分たちの攻撃的サッカーです」
――須藤監督はどんな監督ですか?
「“THE漢”という感じで、熱い監督です。試合中の熱さに影響されて、選手たちも自然と熱いプレーを出すことができています」
ワクワクするような選手に
――食事に気をつかっているとも聞きました。自炊されているんですよね?
「はい。FC東京の長友佑都選手が取り組んでいる(摂取する糖質を一定量に抑えて、たんぱく質と脂質は積極的に摂取する)ファットアダプトという食事法を実践しています。外食だとなかなかできないので、自炊で頑張っています。長友選手が出されている本を読んでこの食事法を知り、大学3年のころに始めました。走れる体になるということで、メリットは多いと思っています」
――どんなルールがあるのですか?
「おかずをたくさん食べる、というのがあって、毎日3品のおかずを作っています。一人では大変なので、一品をたくさんつくって、次の日の夜にもとっておくなど工夫してやっています」
――藤次郎というお名前の由来を教えていただけますか?
「両親が東北の出身で、(出羽国と陸奥国の武将だった)伊達政宗の仮名である藤次郎からとったと聞いています」
――自チームの「藤」が入っていますね。
「同じ文字が入っていたので、加入するときはちょっとうれしかったです(笑)」
――賞金20万円の使い道は決めていますか?
「車が好きなので、新しい車を買うための貯金に回すのもありかなと思ったのですが、せっかくなので物にかえて、それが一つの記念になればいいかなと思っています」
――今シーズンの目標を教えてください。
「まずはJ2昇格です。それについてはチームも今季の立ち上げから言っていたことで、実際に可能な位置にいます。個人としては二ケタゴール。満足することなく、得点を重ねて勝利に貢献し続けたいと思います」
――こんな選手になりたい、というイメージはありますか?
「理想の選手像は、ボールをもったときに会場が沸くような、ワクワクするような選手です。日本代表の三笘(薫)選手(ブライトン)がそうですよね。三笘選手がボールを持つだけでサポーターがワクワクして、スタジアムがどよめく。何かをやってくれそうな期待を感じるような選手になりたいです」
――今後のビジョンは?
「プロサッカー選手としてプレーさせてもらっている以上、一つでも上のカテゴリーを目指すのが一番いいとは思います。ただ、自分はクラブとともに成長していきたいんです。藤枝はまだJ1ライセンスをもっていませんが、まずはJ2に上がれるようにしたいですね」
選手プロフィール
久保 藤次郎(くぼ・とうじろう)
1999年4月5日生まれ、23歳。愛知県出身。167cm/64kg。グランパスみよしFC→帝京大可児高→中京大を経て、今季藤枝に加入。J3通算22試合出場10得点。
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