明治安田生命J3リーグKONAMI 月間MVP。4月度の受賞者は、4試合に出場して3得点を決めた奈良の浅川。一度はJリーガーではなくなったアタッカーが、クラブのJ参入と共にこの舞台に舞い戻ってきた今季にかける思いや今後の目標を聞いた。(取材日:5月12日)
「全てのゴールを言語化できる」
ⓒNARACLUB
ーーJ3KONAMI月間MVPの受賞おめでとうございます。
素直にうれしいです。ただ、1人で取れるモノではないので、チームやサポーターの人など多くの支えがあってもらえたと思いますので本当にうれしいです。
ーー4月は4試合すべてでフル出場を果たし3ゴールを決めています。
ゴールは常に意識していて、3月も3ゴールを決められていたので、それが数字として表れているのはすごくうれしいですけど、これに満足せずやり続けることが大事だと思っています。
ーー開幕からコンスタントにゴールを取れていることは大きいですか?
そうですね。ただ、たとえ取れていなくてもあまり気にしないとも思います。昨季、JFLで得点王になりましたが、前半戦は2点しか取れませんでした。それでも、自分のプレーをやり続けた結果、点を取り続けられるようになったので、やはりどんな状況でも続けることが大事だと思います。ブレずに目標に突き進んでいくだけです。
ーーここまでの6ゴールはすべてワンタッチのシュートで決めています。
僕の中ではシュートを打つときにはDFとの駆け引きを終えていて、あとはGKと駆け引きをするだけという鉄則が自分の中にはあります。そこがゴールを取るための一番のカギになると。本当に味方に生かされているというか、アシストしてくれる選手がよいところに出してくれるので、その前までに駆け引きを終了しておいて、あとはどこを狙うか、GKをどう駆け引きするかと考えています。
ーーだから、ワンタッチのシュートでも慌てないし驚かない。自分の中で予想どおりの位置にボールが来ますか?
僕の中でゴールにはすべて理由があって、すべて言語化できます。自分の言語化よりも速く体が反応してゴールを決めたことは一度だけあるんですけど、そのゴール以外は、ほぼ自分で考えて動いてそこに来てあとは決めるだけと、全部逆算が上手くいくからこそ取れている。だから、僕のゴールは再現性が高いと思います。
反対にシュートを外したときは、『なんで外したのか』と振り返るようにしていて、自分のキックミスなのか、GKのスーパーセーブなのか、動き出しのミスなのか、味方のパスミスなのか。全部、どこのポイントでミスをしたか、個人で雇っている分析官と分析しています。だから、解説すると明確になるんです。
ーーそういう考え方でプレーしているFWの選手は多くないと思います。
僕はずっと佐藤寿人選手を見てきました。ジェフ千葉のアカデミーの大先輩でもありますし、いまでも少し交流があるんですけど、彼のゴールをずっと見ていて、スタジアムに行けば動きを目でずっと追っていました。どう動いて駆け引きしているんだろうと。寿人さんも『ゴールにはすべて理由がある』と言っていて、体がすごく大きかったり強かったりする訳でもない寿人さんがなぜあれだけゴールを取れたのか。そこにいろいろなモノが詰まっていると思います。小学6年生からFWでプレーしてずっとFWでやってきた経験値が、いま生きていると思います。
ーー得意な形のゴールというよりは、状況に応じて逆算して合わせるゴールが多いですか?
そうだと思います。ゴール前、ボックスの中は僕の仕事場です。そこでの動き直しやオフ・ザ・ボールの動きで駆け引きを終えておくことは意識しています。形を見ると違ったゴールもあると思いますけど、駆け引きの部分ではすごく似ているモノが多いと思いますね。
一度Jリーグを離れた事で得られた気づき
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ーーチームとしてもJ3初年度の戦いでここまでは好成績(10節終了時点で5勝3分2敗)を残せていると思います。
開幕戦の松本山雅戦(0●2)がすごくよい基準になりました。そのあと、第3節の長野パルセイロ戦で勝てて、自分たちのサッカーができればすごくよい試合ができてJ3でもやれる自信があったんですけど、その勝利がこの舞台で戦う自信になりましたね。フリアン監督は就任3年目でチームとして積み上げてきたモノをやり続けている感じです。ウチにはサボる選手がいません。みんなで頑張って守り攻める、良いチームだと思います。
ーーフリアン監督が目指しているサッカーはどんなサッカーでしょうか?
まずは守備から。そこは強調しています。だからこそ、クリーンシートの試合は多いです。失点が少ないチームを目指しています。そこから攻撃はボールを保持して、クロスからのシュートにすごくこだわっています。
ーー浅川選手はどんな役割を担っていますか?
今季からこれまでのサッカー人生でやったことのないウイングでプレーしています。もちろん点を取ることはずっと求められると思いますけど、守備ではクロスを上げさせないところは要求されています。ただ、やっぱり一番は点を取ってくれればいいと。最前線には酒井選手というよいストライカーもいるので、2人のストライカーがいるというのは強みだと思います。クロスに対してゴール前に2枚いるのが僕らのスタイルであり、僕に求められるタスクだと思っています。
ーーセンターフォワードとウイングではぜんぜん違いますか?
全然違いますね。FWをやりたいなと思います(笑)。ただ、徐々に慣れてきて自分の中で視野も広がってきたと思います。どちらかと言えば、酒井選手のほうがドリブルをできるのでウイングのほうがいいと思いますけど、それでもあえて僕をサイドに置いている。“ザ・ボックスストライカー”をウイングに置いているチームはあまりない気がしますけど、フリアン監督は常識を壊してくれる監督ですね。1つの大きなルールはありますけど、その中で選手のやりたいプレーや個性を生かしながらチームを作ってくれています。それは僕にとってはすごく大きな出来事になってますね。
ーー昨季一度、Jリーグの舞台を離れ、もう一度戻ってきた中で思い入れも強いのではないですか?
それまで4年間Jリーグでプレーしてきて、“Jリーガー・浅川隼人”というのがすごく出過ぎたというか、そうではなく個人で勝負してみたかったんです。それはJリーグの舞台を離れてみないと分からないなと。また、奈良県にはJリーグのクラブがなかった。僕は小さいころからジェフを見て育って、地元にJリーグのチームがある環境で過ごしてきたけど、いまの奈良の子どもたちにはそれがない。だから、奈良のサッカー少年は外に出ていってしまう。それが今季から奈良クラブもJリーグのチームになり、練習場に来てくれる子どもたちが僕らを見て、『Jリーガーだ』と目をキラキラさせている姿を見ると、やっぱりJリーグはすごく素敵で素晴らしいモノだなと。それは1年間、離れてみて感じました。
実際、奈良の人たちも一体となって盛り上げてくれています。だからこそ、“おらが街のクラブ”となっていければと。いま、勝利至上主義みたない考えがある中で、奈良クラブは地域にどれだけ愛されて、一緒に盛り上げて、一緒に未来を作っていけるかを至上命題と掲げているチームなので、そういった奈良クラブのアイデンティティをサッカーの部分でもサッカー以外の部分でも見せ付けて、多くのファン・サポーターと一緒に奈良の街を盛り上げていきたいと思っています。こういうクラブが新しいロールモデルになれればいいですし、個人としてもそういうロールモデルの選手になりたいです。
ーーその一方で上を目指したいと思いもあると思います。
個人としては、夏までに2ケタ得点を目指していきながら、キャリアハイは昨季の16点でJリーグでは13点なので、それを超えることがまず1つです。17点以上取って、その先の得点王を目指すためには、最低2試合1点ペースで取らないといけないのでそこは意識しています。
もっと先の話をすれば、僕は30歳を過ぎたあたりで体のピークがくるかなと。その時にJ1でプレーしていなければいけないと思いますし、サッカーだけでなくいろいろな活動もしていたいです。いま、ファンの方が毎月スパイクを支援してくださるプロジェクトがあって、そういう方と一緒に歩んでつかんだこの賞だと思うので、どれだけファンの方と近くにいて、一緒にその地域を盛り上げて、スポーツやサッカーを盛り上げていくか。そこを意識しながら進んでいきたいと思います。
文・インタビュー 須賀大輔
1991年生まれ、埼玉県出身。学生時代にサッカー専門新聞『ELGOLAZO』でアルバイトとして経験を積み、2016年からフリーライターとして活動。ELGOLAZOでは柏レイソルと横浜FCの担当記者を経て、現在はFC東京と大宮アルディージャの担当記者を務めている。
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