現役時代はヤクルトスワローズ(現:東京ヤクルトスワローズ)などで捕手兼外野手として活躍し、引退後は様々な球団でコーチを務め2019年は読売ジャイアンツのファームバッテリー兼打撃コーチを担当。現在はDAZNのプロ野球放送で解説を務める秦真司氏が、3回にわたって日本シリーズを展望する。
(インタビュー・構成=川嶋正隆)
──いよいよ11月21日から日本シリーズが開幕します。今シーズンは新型コロナウイルスの感染拡大を受けてリーグ開幕が後ろ倒しとなった影響でセ・リーグとパ・リーグでクライマックスシリーズ(CS)の開催に違いが出ましたね。実戦から長く離れてしまう読売ジャイアンツにとっての影響はいかがでしょうか?
まず、日本シリーズを戦う上で、リーグ優勝が決まってから期間が空きすぎるのはよくありません。実戦感覚が鈍ることで緊張感を持続できないことが挙げられる。巨人については、まずはリフレッシュをさせて、コンディションを調整しながら今年やっていた投内連携やサインプレーの復習をしているでしょう。対戦相手の対策については、CSを見て相手が決まってから始めるしかないですからね。
相手が決まってからは一週間で準備を進めます。バッテリーは相手打者の分析をスコアラーから報告を受けて打者映像を見てミーティングを何度か行います。、打者もスコアラーから相手バッテリーの分析をもらって投手の映像を見てミーティングをやります。
とは言え、日本シリーズに向かうまでに両チームの調整の緊張感は全く違うものになっていて、そこが大きな差になると思いますね。
──巨人はリーグ優勝の後にそれほど緊張感がある試合をこなしていないのに対して、福岡ソフトバンクホークスはCSまで戦っています。この緊張感の差が大きい?
ジャイアンツも(CS開幕日である)11月14日に最終戦を行いましたが、ここの試合はコンディションの確認と日本シリーズに向けての調整という位置付けです。勝ち負けが関係ない試合ですね。ただ、ソフトバンクは負けたら終わりという緊張感のなかでCSを戦ってきました。やはり消化試合の感覚と、CSの感覚は別物ですし、間違いなく勝ち上がってきたチームの方が有利だと思います。
実際に通常のCSでは、2位と3位のチームで勝ち上がった方が1位のチームを倒すこともよくあります。やはり短期決戦では、緊張感のある試合で勢いをつけてきたチームがかなり有利になると思いますね。その点では、パ・リーグは素晴らしい取り組みをしたんじゃないかと思いますね。
CSを戦ったことで、選手たちは緊張感を持った中で試合が続けられますし、勝ち上がったことでチームとしての勢いもある。1試合目、2試合目はパ・リーグの方が試合勘では有利だと見ています。
──実戦から離れている巨人にとっては、どんなことが必要になってくるのでしょうか?
練習から実戦的に取り組むしかないですね。実戦のなかで投手は打者への対応、打者は投手への対応、守りは打球への対応、走者は打球判断の対応など感覚的な要素を取り戻す必要があります。
ただ、今シーズンのセ・リーグはマジックの点灯が早く、優勝も早く決まりました。2位とはかなりのゲーム差が開いての優勝で、終盤は馬なりで試合をしていけば優勝できる状況でした。その分、緊張感ある試合に関してはパ・リーグの方が圧倒的に大きいですし、メンタリティーの部分でも優位です。やはり短期決戦なので、緊張感を持ったままシリーズに入れる点で、パ・リーグの方がかなり有利です。
──また、巨人については都合により東京ドームで戦えない点も大きいですね。
ホームアドバンテージはかなりあるので、これも大きな要素です。ホームアドバンテージがある東京ドームでやる試合と、京セラドームでやる試合は全く別物になってしまいます。その辺りも含めて、ジャイアンツはマイナス面の方が大きいと思います。
──そういった逆境のなか、巨人は8年ぶりの日本一を目指して戦います。振り返ってみると、2012年に巨人が優勝して以降、セ・リーグはパ・リーグに敗れていますね。
パ・リーグというよりもソフトバンクに限っていうと、彼らは三軍システムがうまく機能していて、育成選手が年月をかけて育っています。これが選手たちのレベルアップの大きな要因の1つです。去年、一昨年の埼玉西武ライオンズのような爆発力のある打線を持ったチームが、単発で勝つことはできるかもしれませんが、常勝軍団としてソフトバンクに勝てる球団は、今はいないんじゃないかと思いますね。
後発ですがジャイアンツも三軍を実施しているおかげで若手が育ち、育成出身の選手が出てきています。そうなるとセ・リーグの他の5球団は苦戦を強いられることになるでしょうね。これから先は、よっぽどドラフトでいい選手と外国人の補強ができない限りは、ソフトバンクやジャイアンツに追いつけないでしょう。それくらい力の差が出てくると思いますね。
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