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【コラム】サヨナラホームランに涙したあの夜。球界最強クラスのセットアッパー藤井皓哉、リベンジの時|プロ野球

【コラム】サヨナラホームランに涙したあの夜。球界最強クラスのセットアッパー藤井皓哉、リベンジの時|プロ野球(C)球団提供
【プロ野球 コラム】ホークス取材歴20年を超える田尻耕太郎氏による鷹コラム。今回は、10月8日から始まるクライマックスシリーズについて。
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MVP級の活躍を見せた藤井皓哉

悲劇のまま、2022年は終われない。

ホークスはレギュラーシーズンでは「優勝マジック1」としながら、10月2日の最終143試合目でリーグ制覇を逃した。優勝したオリックス・バファローズとは全く同じ76勝65敗2分・勝率.539だったが、今季直接対決でホークスは負け越していたために規定により順位が決められた。過去に1位と2位がゲーム差なしでフィニッシュした例はあったが、同率で並んだのは史上初めてだった。

記録にも記憶にも残る史上空前の大混戦。選手たちは日々、必死に食らいついた。目の前の1球に全身全霊を傾けた。だからこそ悔し涙が溢れ出して止まらなかった。

10月1日のライオンズ戦(ベルーナドーム)もマジック1で臨んだ一戦だった。引き分けでも優勝できる条件。試合は0-1の九回表に、柳田悠岐が起死回生の23号同点ソロを放って延長戦に持ち込んだ。勢いは明らかにホークスにあった。

延長11回裏、マウンドに上がったのは藤井皓哉。

今季のホークスの躍進は彼がいなければ、成しえなかったといっても過言ではない。知名度では柳田や千賀滉大には敵わないが、今季の「MVP」は藤井だったのではないか。

今シーズン、この背番号48がマウンドに登場すれば、ファンはその日の勝利を確信した。

自由契約、独立リーグを経験して大きく成長

藤井はホークスに加わって今年が1年目のシーズンだった。岡山県出身の26歳。プロ生活は広島カープでスタートした。2014年ドラフト4位で入団。プロ4年目にはプロ初勝利を挙げ、翌年はファームで26試合に登板して防御率0.33の驚異的な成績を残した。しかし、一軍では思うような活躍が出来ずに2020年オフに自由契約となり退団。

野球人生の灯火が消えそうになったが、再起をかけて2021年に所属したのは独立リーグ・四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスだった。チームを率いる吉田豊彦監督は南海、ダイエー時代にローテ投手として活躍したホークスOBだ。「NPBに戻る気持ちがあるなら」と誘われて、強い覚悟を持って再出発をした。

「NPBとは環境がまったく違う中で、自分で工夫して練習もするし、試合にも臨む。それが一番の学びでした」

厳しくもあり、決して恵まれているとは言えない環境や状況。だけど、言い訳はしなかった。その中でいかに最善を見つけてベストを尽くすか。技術も心も大きく成長させた。

また、高知では先発ローテを任されていた。吉田監督の「1試合を任せる」との方針で、目の前の試合に集中し、邪念を抱くことなくマウンドにいる自分と向き合えるようになった。

「以前は目の前の結果ばかり気にしていた」

そうやって先発で懸命に投げていた2021年5月9日、ホークスの三軍との交流戦に先発するとノーヒットノーランの快挙をやってのけた。どんなカテゴリーや戦力差などの条件だとしても、無安打無得点試合はなかなかできるものではない。この一戦が大きなアピールとなり、昨年の暮れにホークスへの入団が決まってNPBへ復帰を果たした。

育成契約からホークスの勝利の方程式へ

当初は背番号「156」の育成契約で入団した。そこからキャンプ、オープン戦で猛アピール。開幕直前に支配下入りを果たしたのだった。

ホークスでの最初の公式戦登板は3月26日、開幕2戦目の日本ハム戦。実はこの試合では失点をしている。

「だけど、僕の分岐点はそこだったと思います」

以前の自分ならば焦って、迷っていた。しかし、ホークスに来てからの藤井は違った。翌日も連投すると1回2/3を完全リリーフ。嬉しい勝利投手の1勝も手にした。

「余計なことは考えず、やってやろう。チームを助けよう。それだけでした」

ホークスへ入団が決まった時の会見では「自分には特徴となるボールがない。いろんなボールをまんべんなく投げられるのが自分のスタイル」と話していたが、現在の印象はまるで違う。150キロ台中盤の威力あるストレート、伝家の宝刀フォークボールは「第2のお化け」と表現したくなるほどの落差である。

育成でのNPB復帰から開幕一軍、そして投げるたびに信頼を勝ち取って、球界最強クラスのセットアッパーへ。

ライオンズ戦での涙。やり返すチャンスはすぐそこに

20221001_NPB_hawks_FUJII(C)時事通信

そんな藤井が、まさか泣き崩れるシーンに出くわそうとは‥‥‥。再び場面は10月1日のライオンズ戦。延長11回裏、山川穂高に41号サヨナラ2ランを浴びた。左翼席上段へ吸い込まれる打球を呆然と見送った。その後は、顔を上げることが出来なかった。

カープ時代の藤井について「精神面に脆さがあった」という話も聞いたことがある。今季55試合目の登板で黒星は初めて。しばらく経験のなかった大きな挫折を味わった右腕は立ち直れるのか。そんな心配をしてしまうほどの号泣だった。

しかし、杞憂だったようだ。

長い時間バスに揺られてチーム宿舎のホテルにたどり着いた頃には、もう前を向いていた。藤本博史監督の部屋をノックする。「明日も投げさせてください」。もし登板すれば4連投になったが、その心配も振り払おうと直訴をしに行った。結果的に翌日の藤井の登板はなかったが、その気持ちが嬉しかったと藤本監督は話していた。

悔しくて泣いたのは藤井だけじゃないのは、言うまでもない。

野球をやっていて涙したことは過去一度もなかったという藤本監督さえも「野球人生で初めて目から変な汁が出たよ」と振り返った。

ただ、振り返ったのは全体練習を再開した5日までだ。やり返すチャンスはある。

日本一を目指す熱い戦い「2022 パーソル クライマックスシリーズ パ」(以下CS)が8日のファーストステージから開幕。ホークスはまず本拠地PayPayドームに迎えるライオンズと対戦。勝てば、京セラドームで待ち構えるバファローズとのファイナルステージへ進む。

ホークスにとっては2年ぶりに臨むポストシーズン(CS、日本シリーズ)の戦い。2018年、2019年は今季と同じくシーズン2位からCSを勝ち上がり、日本一まで一気に飛翔した。ポストシーズンは2019年のCSファーストステージ第2戦から16連勝中だ。

最後は笑って2022年を終える。ホークスが劇的なドラマを起こしに行く。

文・ 田尻耕太郎

1978年生まれ、熊本市出身。法政大学卒。ホークス球団誌の編集を経て、2004年夏にフリーに。一貫して「タカ番」スタイルの現場主義を大切に取材活動を続けており、2021年にちょうど20年目のシーズンを迎えた。「Number」など雑誌・ウェブ媒体への執筆のほか、ラジオ出演やデイリースポーツ特約記者も務める。

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