戦術の高度化が加速する現代サッカー界では、ストライカーに様々な役割が求められるようになった。パリ・サンジェルマン(PSG)のFWマウロ・イカルディのような古典的な9番は減少しつつある。
アルゼンチン生まれのイカルディは、幼少期に家族と共にスペインに移住。2008年にバルセロナの下部組織に入団した。しかしトップチームデビューを果たせず、11年夏にイタリアのサンプドリアに移籍。ユースカテゴリーで39試合30ゴールを奪う活躍を見せるとその翌年、19歳にして当時セリエBの舞台でプロデビューを果たした。
2012-13シーズンはセリエA初挑戦。序盤戦は途中出場が続いたが、初先発を果たした第13節ジェノア戦(3-1)で初ゴールをマークする。この活躍でレギュラーの座をつかむと、第19節ユヴェントス戦(2-1)で2ゴール、第22節ペスカーラ戦(6-0)では1人で4ゴールを奪取。最終的に年間10ゴールを記録し、チーム内得点王に輝いた。
一躍、イタリア中の注目を集めるようになったイカルディは、1300万ユーロの移籍金で名門インテルにステップアップ。クラブ史上最年少で「9番」を背負うと、負傷で出遅れた割には上々の年間9ゴールを記録した。そして14-15シーズン、本格的にブレイク。ロベルト・マンチーニ監督の下、セリエA36試合で22ゴールを叩き出し、自身初のセリエA得点王に輝いた。
翌15-16シーズンは主将に就任し、低迷期のインテルを支えつづけた。節目のセリエA100ゴールを達成した17-18シーズンには、29ゴールで自身2度目となる得点王の座を射止めている。世界屈指の点取り屋として広く認知されるようになったのはこの頃だ。
インテルで絶対的な地位を築いていたイカルディだったが、19年2月に契約延長交渉のこじれから主将の座をはく奪され、試合の招集も拒否する事態に。3月にようやく練習復帰を果たすも、サポーターとの関係性も最悪の状態。7月に就任したアントニオ・コンテ監督から戦力外通告を受け、PSGへ期限付き移籍することとなった(その後、契約は完全移籍に移行)。
ピッチ外でのトラブルでイタリアを追われる形となったが、フランスの地でも変わらぬ得点力を発揮。チャンピオンズリーグ6試合で5ゴールを奪うと、リーグ・アンでも20試合で12得点をマーク。シーズン途中で打ち切りとなったものの、自身初のリーグタイトルを手にした。イタリア、フランス、欧州カップ戦とすべてのコンペティションで継続的にネットを揺らすイカルディは、純粋な“9番”の世界最高峰と言えるだろう。
プレースタイル
古典的なストライカーらしく最大の武器は決定力だ。プレーにあまり関与せず、常にボックス内で勝負する。一つひとつのプレー精度が高く、とりわけ相手の視野から外れるポジショニングや一瞬のスペースを見逃さない目、そして得点への嗅覚は特筆に値。キャリア通算283試合で155ゴールと高い得点率を誇る。
181cmと大柄ではないものの、高い跳躍力と絶妙なポジショニングを生かしたヘディングでの得点も多い。またトーマス・トゥヘル監督の指導により、PSG加入後はポストプレーの質も向上。チームのためにボールを収める動きも良くなっている。大一番での勝負強さも兼備し、一発で勝負を決める怖さを備えたゴールハンターだ。
動画:プレー&ゴール集
エピソード
素晴らしい選手に違いないが、気性の荒さからピッチ外でのいざこざが絶えない。サンプドリア時代の13年には、適応を助けてくれた同胞マキシ・ロペスの妻ワンダ・ナラ氏と不倫。数ヶ月後に結婚している。翌年には、インテルの選手としてロペスと初対戦となったが、試合前の握手を拒否して騒動となった。
その後、イカルディは代理人に愛妻を指名。インテルでの契約延長交渉の難航は、メディアでも公然とチームメイトやクラブ関係者を批判する彼女の存在が火種となったと伝えられている。
また2016年に出版した自伝の中で、インテルの一部サポーターを痛烈に批判。抗議を受けた後には再び口撃し、問題となった。その後謝罪し、自伝の該当部分を消去したが、クラブやイタリアサッカー連盟から罰金処分を受けている。
プロフィール・経歴
マウロ・イカルディ/Mauro Icardi
1993年2月19日生まれ 181cm・75kg 利き足:右
シーズン | 所属クラブ | 出場・得点 |
---|---|---|
2011-12 | サンプドリア | 2試合・1得点 |
2012-13 | サンプドリア | 31試合・10得点 |
2013-14 | インテル | 22試合・9得点 |
2014-15 | インテル | 36試合・22得点 |
2015-16 | インテル | 33試合・16得点 |
2016-17 | インテル | 34試合・24得点 |
2017-18 | インテル | 34試合・29得点 |
2018-19 | インテル | 29試合・11得点 |
2019-20 | パリ・サンジェルマン | 20試合・12得点 |
2020-21 | パリ・サンジェルマン | 13試合・5得点 |
※成績は国内リーグ(2021年2月26日現在)
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