アメリカ戦の先発メンバーに田中碧の名前は無かった。アジア最終予選の第4節・オーストラリア戦で4-3-3の布陣に変更して以降、ほとんどの試合で先発出場を飾ってきた田中は、最終調整となるドイツ遠征最初の試合となったアメリカ戦で出番を得ることのないまま試合終了のホイッスルを聞いたのである。
システム変更により割を食ったところはあるかもしれない。それにスポルティングに移籍した守田英正がクラブでハイパフォーマンスを残している影響もあったのだろう。それでも、今季ドイツ2部のデュッセルドルフでしっかりと出場機会を得ている男が、ピッチに立てないのは意外だった。
ただ、アメリカ戦は田中不在の影響を受けることなく、日本代表は2-0という最高の結果を得ることになった。ボランチでコンビを組んだ守田と遠藤航は、攻守に際立った存在感を披露。前線からのプレッシングと連動した守備でボールを奪えば、攻撃時には素早く縦パスを入れることでショートカウンターの起点になった。
この試合をベンチから見た田中は、自身がピッチに立った時のイメージを膨らませていた。
「もともとダブルボランチの方がやりやすいタイプですし、結局チームの軸や重心になることは変わらない。ダブルボランチの方が、比較的動ける範囲も多いし、自分の特長が出やすいと思っている。あとは僕で言えば、どれだけゲームをコントロールできるか。攻撃においても守備においても、自分はボールを触る回数や動く回数が他の選手よりも多いと思うので、それで前の選手が躍動してくれればいいと思う。それが自分の価値につながると思っています」
周りとのバランスを取りながら積極的にボールを触ってリズムを作る。前回のアメリカ戦以上にボールをより保持する展開になることこそが、田中がさらに輝くポイントになる。
「ボールを握る時間を増やさないといけないのは間違いない。握る第一歩は基本的にボランチになるので、後ろからのボールを前につなぐことは大事だと思います。結局ボールが前に行ったときに、前の選手がプレーを選択するので、押し込むのか、押し込まないのかは、自分でどうすることもできないけど、後ろから作ろうとした時や奪った瞬間に自分が受けてつなげれば、ショートカウンターの形は多く作れると思う。そうすればチームとしての特長も出やすいと思う。W杯を考えた時に一番大事なのは守備だと思っていて、そこは自分の課題でもあります。より自分自身求めていかないといけないと思っています」
この言葉からもわかるように、やはりW杯に向けてスタメンの座を手にしていくためには“守備”がカギを握ることは間違いない。ただ、それ以上の攻撃性を見せることで、アピールしていこうとしているのも伝わってくる。かねてから守備的な思考でサッカーをする選手ではない。どんどんボールに触り、どんどんゴールへと突き進んでいくのが田中らしいスタイルだ。
そこのバランスをうまく取りながら、このチームにおける自分にしかできないプレーを見せていく必要がある。
「もちろん今回とW杯では出る選手が変わるかもしれない。ただ、自分のやれることをピッチで表現することが、自分の価値につながると思う。誰かに寄せるのではなく、持っているものを出して、評価してもらえればいい」
アメリカ戦でピッチに立てなかった悔しさは、今回のエクアドル戦にぶつければいい。前回のダブルボランチ以上の活躍を目指し、田中は“ホーム”での試合に臨む。
文・林遼平
埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。
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