5月に腰のヘルニア手術を受けた原英莉花が、今週の「北海道meijiカップ」で3カ月ぶりにツアー復帰した。3日間を戦い抜いて順位は54位。上位争いに食い込めなかったが、完全復活へ大きな一歩だった。
原は2020年に国内メジャー2勝をマークしたが、腰の状態悪化で低迷した。20年以降は勝ち星を1つ伸ばすにとどまっている。ゴルフの実力はもちろん、ジャンボ尾崎の愛弟子で、テレビ出演やインタビューでもキャラクターが愛される彼女の復活は、ゴルフ界を盛り上げる大きな要素になりそうだ。
そして、原個人の復活に加えて期待したいのが、黄金世代の”逆襲”だ。1998年度生まれで勝みなみや畑岡奈紗、渋野日向子らが揃う世代。今季の黄金世代の優勝は吉本ひかると小祝、世代13人目(世代別で見ると最も多い)の優勝者となった小滝水音の3選手いる。
しかし世代で3選手と言えば多いが、メルセデスランキング上位で争っている選手はランク5位の小祝くらいだ。もちろん畑岡、渋野、勝といった世代をけん引する選手が海を渡ったからこそ、国内での勢いが弱まっている。しかし今年で25歳になる彼女たちに、世代交代の波は影響している。
黄金世代の年間王者は誕生していないが、2020-21の稲見萌寧、昨季の山下美夢有と下の世代の選手たちが女王を戴冠。同じく下の世代の古江彩佳や西村優菜、笹生優花は日本で活躍しすぐに米国へ渡った。今季は2021年にプロテストに合格したばかりの岩井姉妹、櫻井心那といった20代前半もしくは10代の世代たちがツアーをけん引し始めている。
宮里藍さんと横峯さくらという同学年のスターコンビが日本を離れてから、ゴルフ界では世代で選手をくくることはしなかった。しかし黄金世代のセンセーショナルな活躍は「この学年からまた新たなスターが出てきたのか」とファンを楽しませてきた。
ゴルフ好きを超えて世の中に「黄金世代」というワードが知られるということは、スポーツ認知という観点で非常に重要なのだ。
当時15歳の勝が2014年「KKT杯バンテリンレディス」を制し、新垣比菜はアマチュアで上位をうかがう選手に。畑岡が「日本女子オープン」でアマチュア史上初の国内メジャー制覇。極めつけは渋野だ。アマチュア時代に無名だったが、2019年に海外メジャー「全英女子オープン」を優勝したのだ。
多くの先輩プロが成し得なかった偉業を、黄金世代は主役を入れ替えながら次々に達成した。その度に黄金世代の名前が世の中に伝えられてきた。実力はもちろん、それぞれの個性はお茶の間から支持されたのだろう。オフシーズンは渋野、勝、小祝、原らを中心にバラエティ番組にも世代で揃って呼ばれた。飾り気のない素直なトークに惹かれたファンも多いのではないだろうか。
米ツアーでプレーする畑岡は悲願の海外メジャー制覇へあと一歩の試合が続き、渋野や勝は米ツアー制覇を目指す。小祝は安定した戦いぶりを見せ、身体の悩みがなくなりつつある原はここから一気に復活劇を狙う。まだまだ明るい話題を提供して欲しい世代であり、そして低迷期を迎えている”仲間”の復活を期待したい。
プロテスト合格後に世代で一番早くツアー優勝を果たした新垣は、ここ数年シード落ちを繰り返している。感覚の要素が多いゴルフで調子を悪くすると一気に負のスパイラルから抜け出せないことは多い。渋野らを育てた青木翔コーチと契約し、スイングなどを見直しているという。
アマチュア時代からツアーで活躍するなど素材は一級品だ。昨年に下部ステップアップツアー「京都レディスオープン」で復活の兆しを見せる優勝を遂げるなど、まだまだ活躍を期待したい。
米ツアーから撤退後に優勝に届いていない河本結も、今季はメルセデスランキング91位と苦しい状況が続く。2018年に下部ステップアップツアーで4勝を挙げ、19年の3月にはレギュラーツアーで初優勝した。しかし転機は20年。米ツアーに本格参戦したシーズン序盤にコロナ禍に見舞われた。
当初計画していたプランは崩れ、孤独な戦いを余儀なくされた。21年には米ツアーからの撤退を表明したが、その後の国内ツアーではなかなか優勝争いに絡めずにいる。レギュラーツアー参戦1年目で賞金ランク6位に食い込むなど、こちらも素材はトップクラスだ。
いよいよ中堅と呼ばれるようになってきた黄金世代の選手たち。原や小祝には国内ツアーの中心にいて欲しいし、激しい世代交代の波にのまれることなく、新垣や河本の復活劇にも期待したい。
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