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【コラム】アーセナルがふたたび陽の当たる場所へ──。OBは少し黙った方がいい | 粕谷秀樹のNOT忖度 | プレミアリーグ

【コラム】アーセナルがふたたび陽の当たる場所へ──。OBは少し黙った方がいい | 粕谷秀樹のNOT忖度 | プレミアリーグ(C)Getty Images
【欧州・海外サッカー コラム】直近のプレミアリーグ12試合で28ポイントを稼ぎ、CL出場圏内の4位まで浮上。アーセナルに完全復活間近の兆しがある。なにかと批判的なOBは少し黙った方がいい。

好調の要因として挙げられる意識改革

昨年12月7日のエヴァートン戦。当時のラファエル・ベニテス体制がにっちもさっちもいかなかったマージーサイドの名門に1-2で敗れた後、9勝1分2敗の快進撃である。

2022年1月1日のマンチェスター・シティ戦は1-2の惜敗だった。第3節に0-5の大敗を喫した相手との再戦で、自分たちの成長をものの見事に立証した。

3月16日のリヴァプール戦は0-2で敗れている。アレクサンドル・ラカゼットが、マルティン・ウーデゴールが好機を迎えたものの、相手GKアリソンの迅速、かつ的確な対応により、ゴールレスに終わった。

しかし、そのほか10試合で28ポイントを稼いでいる。12試合で得られる最大ポイントの約78%を加算し、アーセナルは4位にまで浮上してきた。

好調の要因として、意識改革が挙げられる。マイボールになった瞬間、あるいはボールを奪われた際の反応が鋭くなった。しかも連動性があり、狭いゾーンで瞬く間に数的優位を作る。

これもひとえに、ミケル・アルテタ監督の補強戦略によるもの、といって差し支えない。冨安健洋、ベン・ホワイト、ガブリエウ、トーマスなど、指揮官のリクエストによって獲得したフィールドプレーヤーは、いずれもが近代フットボールを難なくこなせるすぐれたタレントだ。リヴァプールのユルゲン・クロップ監督も、高く高く評価している。

「アルテタの明確なアイデアのもとに若い才能が集結した。彼らをまとめ、前線でハードワークを続けるラカゼットの存在も大きい」

アーセナルが4位以内、すなわちチャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得するためのライバルは、おそらくマンチェスター・ユナイテッドだ。本稿執筆時点でアルテタのチームは1ポイントのリードを奪い、試合消化数もふたつ少ない。

したがってユナイテッドが残る9試合を全勝しても、いや、リヴァプール戦とチェルシー戦を残しているのだ。すべて勝つ!? 太陽が西から登ってもあり得ない。CL出場権のアドヴァンテージは、アーセナルが握っている。

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夏の市場に莫大な資金を投下か

しかし、アーセナルのスケジュールもなかなかタフだ。

  • 3月19日 アストンヴィラ(A)
  • 4月4日 クリスタルパレス(A)
  • 4月9日 ブライトン(H)
  • 4月16日 サウサンプトン(A)
  • 4月20日 チェルシー(A)
  • 4月23日 ユナイテッド(H)
  • 5月1日 ウェストハム(A)
  • 5月7日 リーズ(H)
  • 5月15日 ニューカッスル(A)
  • 5月22日 エヴァートン(H)
  • 順延分 トッテナム(A)

アウェーが7試合もある。アストンヴィラはフィリペ・コウチーニョ、ドウグラス・ルイス、ジョン・マッギン、ジェイコブ・ラムジーなど中盤にすぐれたタレントを擁し、クリスタルパレスはシティから計4ポイントを奪った曲者である。また、近年のウェストハムは着実に力をつけ、油断できないチームにグレードアップした。

そしてもちろん、チェルシーとトッテナム、ユナイテッド……いわゆるビッグ6同士の対決も、アーセナルのカギを握っている。

27試合を消化した時点で31失点。ビッグ6との7試合は19失点。およそ61%に及び、1勝6敗だ。どうにもこうにも分が悪い。こうした状況を踏まえると、4月20日のチェルシー戦、3日後のユナイテッド戦、4月最終週のミッドウィーク開催が噂されるトッテナム戦が、アーセナルの今シーズンを大きく左右するのではないだろうか。

オーナーのスタン・クロエンケの実子であり、アーセナルの強化を司るジョシュ・クロエンケは、5位以下で21-22シーズンを終えても今夏の市場に莫大な資金を投下するといわれている。所有するロサンゼルス・ラムズ(NFL)がスーパーボウルで優勝し、800億円とも900億円ともいわれる報酬を得たという。この巨額の一部を、強化と債務返済に充てるプランだ。

2月末から飛び交う情報が事実であれば、アルテタは心強い。オーナーのバックアップで即戦力が手に入る公算が大きくなっているのだから、より大きな獲物をゲットするためにもCL出場権という餌が必要だ。

アーセナルが主役の座から滑り落ちて、少なからぬ月日が流れていった。アルテタが監督に就任した際、「理屈が先行しすぎている」「あまりにも経験が足りない」。マーティン・キーオンやイアン・ライト、ポール・マーソンといったOBはつねに批判的だった。

いま、アーセナルは4位以内が見えつつある。クロップが指摘したように、若い才能が大挙して集まり、2~3年後が楽しみなチームになった。主力の年齢から推察すると、シティとリヴァプールはまもなく下降期を迎える。

ふたたび陽の当たる場所へ──。アーセナル完全復活間近の兆しとともに、22年の春がやって来た。OBは、少し黙った方がいい。

文・ 粕谷秀樹

1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。

粕谷秀樹のNOT忖度

配信情報

プレミアリーグ第30節
アストンヴィラ対アーセナル

  • 配信: DAZN
  • 配信開始:3月19日(土)21時30分
  • 解説:清水範久 実況:若月弘一郎
  • 会場:ヴィラ・パーク

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