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【コラム】ロマン・アブラモヴィッチの功績とチェルシー・オーナー退任の是非 | 粕谷秀樹のNOT忖度 | プレミアリーグ

【コラム】ロマン・アブラモヴィッチの功績とチェルシー・オーナー退任の是非 | 粕谷秀樹のNOT忖度 | プレミアリーグ(C)Getty Images
【欧州・海外サッカー コラム】ロシア軍によるウクライナ軍事侵攻を受け、ウラジーミル・プーチン露大統領と親交のあるロマン・アブラモヴィッチ氏は愛するチェルシーを手放さざるをえなくなった。名物オーナーの功績と退任の是非を論じる。

18年8ヶ月で21個のタイトルを

2003年にロマン・アブラモヴィッチが買収していなかったら、フランク・ランパードとジョン・テリーはチェルシーを去っていたに違いない。ディディエ・ドログバ、アリエン・ロッベン、ミヒャエル・バラック、エデン・アザールなどの名だたるプレーヤーも、ウェストロンドンには興味を示さなかったはずだ。

ジョゼ・モウリーニョ、カルロ・アンチェロッティ、アントニオ・コンテ、そしてトーマス・トゥヘルも、履歴のなかに《職業:チェルシー監督》とは明記していなかったと考えられる。

プレミアリーグとFAカップが5回ずつ、リーグカップは3回、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、コミュニティシールドを2回ずつ制し、クラブ・ワールドカップとスーパーカップはどちらも1回。オーナー就任後、18年8ヶ月で21個のタイトルをチェルシーにもたらした。

03年以降のプレミアリーグ勢で最多。ヨーロッパ全体でもバイエルン・ミュンヘンの26回、バルセロナの24回に次ぐ好成績だ。

ただ、ブンデスリーガはバイエルンの一強時代が延々と続いている。ラ・リーガの優勝争いはバルサとレアル・マドリーにほぼほぼ限られる。ビッグ4ないし6がしのぎを削るプレミアリーグとは様相が異なり、なおかつアブラモヴィッチのチェルシーは、ビッグの括りから一度たりとも外れていない。

ヨーロッパ全土に戦火が拡がろうとしている。ウラジーミル・プーチンと取り巻きによる時代遅れな誇大妄想により、ロシア人というだけで白眼視されるようになってきた。プーチンと近いアブラモヴィッチはなおさらだ。スポーツ界全体がロシア関連を締め出し、アブラモヴィッチも “大好きな” チェルシーを手放さざるをえなくなった。

だが、少なくともサポーターはロシア人のオーナーを愛していた。勝てば友人・知人とハイタッチを交わし、負けるとあからさまに落胆する。アブラモヴィッチの一挙手一投足は一般大衆に近かった。チームLOVEでは、マンチェスター・ユナイテッドのグレイザー・ファミリーをはるかに上まわる。

「顔と名前が一致するのはクリスティアーノ・ロナウド、ポール・ポグバ、ブルーノ・フェルナンデス、それからダビド・デ・ヘアだけだろうな」

ユナイテッドのサポーターは、アメリカ人オーナーが大大、大っ嫌いである。アブラモヴィッチのように私財を注ぐわけではなく、スタジアムにも滅多に顔を出さないからだ。

若手の育成にも投資を惜しまず

アブラモヴィッチは04年、下部組織専用の練習施設を新築し、若手の育成にも投資を惜しまなかった。フットボールの選手を育てるだけではなく、一般教養をマスターするためのプログラムを構築したり、音楽界やバレエ界の養成機関を視察したり、情操教育でも多くの少年をサポートしている。

ドミニク・ソランケ(現ボーンマス)が義務教育レベルの修了試験で好成績を残していたことは、チェルシー界隈でよく知られている。大切な息子を預ける保護者にとって、アブラモヴィッチは好ましい存在だったはずだ。

現在のトップチームで活躍するメイソン・マウント、ルーベン・ロフタス=チーク、アンドレアス・クリステンセン(今夏にバルサ移籍?)、リース・ジェイムズ、カラム・ハドソン=オドイ、トレヴォー・チャロバーはユース出身のエリート候補生だ。

ローン先で奮闘しているMFのコナー・ギャラガー(クリスタルパレス)とビリー・ギルモア(ノリッジ)、FWアルマンド・ブロヤ(サウサンプトン)も、早ければ来シーズンには戻ってくる。

さらにサウサンプトンのDFヴァレンティノ・リヴラメント、クリスタルパレスのDFマーク・グエーイ、ローマのFWタミー・エイブラハムは買い戻しオプションをつけ、あくまでも戦力として位置づける。

これほどのメンバーを揃えられたのは、やはりアブラモヴィッチの財力とチェルシーに対する愛情に負うところが大きい。

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これ以上、関わるべきではない

第二次チェチェン紛争、ジョージア紛争、クリミア半島併合など、プーチンは蛮行を重ねてきた。新興財閥のボリス・ベレゾフスキー、元ロシア連邦保安局職員のアレクサンドル・リトビネンコ、女性記者のアンナ・ポリトコフスカヤなど、現体制に批判的だった者の不審死に関与したともいわれ、アレクセイ・ナワリヌイ(ロシアの反体制指導者)の殺人未遂事件では首謀者とされている。

確固たる証拠が見つからず、推定無罪ではあるものの、プーチンは常軌を逸している。この、危険すぎる男にアブラモヴィッチは出資し、なおかつロシア・ワールドカップの開催にもひと役買った。世界が疑念を抱いたのは当然であり、これ以上、チェルシーに関わるべきではない。

そして英国政府は現地時間3月10日、アブラモヴィッチの資産を凍結した。このペナルティーにより、チェルシーはチケットやグッズの販売、契約更新などを禁じられたが、下部組織で育った有望株を軸に構成できれば、来シーズン以降のプレミアリーグでも上位進出は可能だ。ポテンシャルは十二分にある。

非民主主義国のオーナーやスポンサーの莫大なサポートが、クラブ経営に必要不可欠だとしても、ロシアや中東、中華人民共和国の人間、企業は大きなリスクを孕んでいることが、プーチンの暴走で浮き彫りにされた。ヨーロッパ・フットボール全体が、考え直さなければならない。

文・ 粕谷秀樹

1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。

粕谷秀樹のNOT忖度

配信情報

プレミアリーグ第29節
チェルシー対ニューカッスル

  • 配信: DAZN
  • 配信開始:3月13日(日)23時00分
  • 解説:ベン・メイブリー 実況:下田恒幸
  • 会場:スタンフォード・ブリッジ

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