今夏の移籍市場を語るにあたり、多くの者がセリエA王者ミランによる重要な補強を忘れている。そう、21歳MFヤシン・アドリのことだ。ミランのパオロ・マルディーニTD(テクニカルディレクター)およびフレデリック・マッサーラSD(スポーツディレクター)はフランス人MFの獲得を強く望み、より有利な条件で選手を確保するために1年前の夏、選手の所属先であるボルドーと完全移籍で合意に至った。
昨シーズンはミランからレンタルの形で古巣でのプレーを続けたアドリ。だがこの1年間、ミラノでのデビューへ向けて、イタリア語の学習だけでなく、ピオリの戦術も研究し、名門クラブで主役の座を勝ち取るための準備を整えてきた
ミランが好むポリバレントな選手
今夏、ミランが獲得に乗り出しているMFチャールズ・デ・ケーテライアに代表されるように、ミラノのクラブはここ数年、複数のポジションに対応できるユーティリティ性のある選手の発掘に努め、その動向を追ってきた。
古巣ボルドーへのレンタルを終えてようやくミランに合流したばかりのヤシン・アドリも、複数の役割をこなすことのできるポリバレントな選手と言えるだろう。アドリ自ら『DAZN(ダゾーン)』のインタビューにおいて自身の特徴を明かしている。
「僕はほぼすべてのポジションでのプレー経験がある。パリ・サンジェルマン(PSG)の下部組織では、最初、センターバックを務め、それからレジスタやトップ下のポジションもこなした。代表チームでは、両サイドでプレーしたことがあるし、背番号9番の役割を任されることもあった」
ステファノ・ピオリはこれまで、DFピエール・カルルやMFアレクシス・サレマーカーズ、FWジュニオール・メッシアスやMFラデ・クルニッチらの起用法を変更することでチームのバリエーションを増やし、対戦相手の攻略に活かしてきた。アドリも「問題なく適応できるだろう。ユニフォームさえ託してもらえれば、後は僕が何とかする」と語り、自身の持ち味であるユーティリティ性をアピールする意気込みを見せている。
フランスから見守ったミランの戴冠
1年前にミラノ行きを決断していたアドリ。「連絡を受けた時は信じられない気持ちだったが、すぐにオファーを受けることを決めた。偉大なミランに『ノー』なんて言えない。イタリアで最も重要なチームだからね」と当時を振り返る。
その後、ピオリのチームがイタリア王者の座に輝くまでの昨シーズンの道のりは、テレビを通して目にしてきた。
「僕はすべての試合を観戦することで、離れていてもチームとつながろうとしていた。準備万端でミラネッロに臨めるよう、できる限りのことをしてきたつもりだ。ただスクデットが決まった最終節は、テレビの中に入り込んで一緒にお祝いをしたかったよ」
ピオリ指揮下で求められる役割は?
パルマ出身の指揮官が採用する4-2-3-1のシステムにおいて、アドリのポジションの選択は良い意味で難しい。フランス人MFは、ほとんどのポジションをカバーできるためだ。
ピオリはミラネッロで開始した合宿の初日から、アドリとコミュニケーションを取りつつ、複数のポジションでテストし、選手の特徴や反応、動きを目の前で確かめ、能力を最大限に発揮させることが可能な選択肢を模索している。合宿初日の会見においては、「マークを外すのが上手く、素早く縦を狙った攻撃ができる」と語るなど、アドリの優れた戦術頭脳やダイナミックなプレーを評価している。
アドリはこうした特徴を活かせるよう、時には純粋なレジスタとして、時にはセンターフォワードの背後のトップ下として、ジョーカーの役割を果たすことになるだろう。
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