2月1日、日本は首位を走るサウジアラビアをホーム・埼玉スタジアムに迎える。
現在、勝点19のサウジアラビアは、この試合に勝てばカタールW杯の出場が決定。過去に数々の劇的な勝利の舞台となってきた埼スタは、いまや代表にとっての聖地なだけに、そこでライバルの歓喜を見届けるような屈辱は避けなければならない。
現実的にも、日本はサウジアラビアに勝利しなければ厳しい状況になる可能性が高い。3位のオーストラリアは勝点14で日本に肉迫してきている。2位以内がカタールにストレートインできるレギュレーションを考えると、ここで敗れて3位転落となってしまえば、相当なプレッシャーがかかった状態で3月の最終予選ラスト2試合を戦うことになる。
アジアをリードする国としてのプライド、そして今予選を勝ち抜くために、あらためてサウジアラビア戦は必勝あるのみである。
相手の脅威となる伊東純也のプレー
昨年10月のサウジアラビア戦を0-1で敗れて以降、日本はここまで4連勝と巻き返してきた。そのチームの基盤となっているのが、[4-3-3]システムだ。敵地でサウジアラビアに黒星を喫した直後、森保一監督は次のオーストラリア戦に向けて短い時間の中でシステム変更を決断。直後のオーストラリア戦の勝利(2◯1)を皮切りに、その後の連勝を踏まえれば、MF遠藤航、MF守田英正、MF田中碧の中盤3人の攻守の働きが非常に効果的であることは明らかである。引き続き、今回のサウジアラビア戦もこれまで以上に3人のハイパフォーマンスがカギを握るのは間違いない。
加えて、[4-3-3]システムで相手に脅威を与えるために、大事なポイントが存在する。それは、FW伊東純也のプレーである。
現在、最終予選で3試合連続ゴール中のアタッカー。今さらキーマンに挙げるまでもなく重要な選手であることは誰もが知るところだが、ここでは[4-3-3]システムの機能性という観点で、彼が示している働きの重要性について触れたい。
伊東といえば、爆発的なスピードが魅力だ。特に素走りだけでなく、ドリブルでも速度が落ちることなく推進していくあの突破力は、類まれな一芸である。その個人の特徴がそのまま日本の戦術(右サイド攻撃&鋭いカウンターアタック)にも昇華しているほどだ。
右利きの右サイドプレーヤーとしてタッチライン付近でボールを受け、ウイング然とした縦突破を繰り返すというのが伊東のプレーイメージとして浮かぶが、よく見ていくと、彼はそうした単調なプレーに終始していないことがわかる。そしてそこに、[4-3-3]システム機能に欠かせない働きが存在している。
直近の中国戦でも見られたが、伊東の後方ポジションに位置する右サイドバックのDF酒井宏樹がタッチラインいっぱいのところに立ち、伊東はその一つ内側のハーフスペースのレーンにいる場面がある。日本の[4-3-3]システムにおける相手4バックの守備に対する利点は、敵の4枚のDFに対してピッチを縦に5分割した5レーンにすべて選手を配置することで、前線で「5対4」の数的優位な状況を作れることだ。例えば、酒井が右サイドの一番外側のレーンで幅を取ると、本来ウイングの位置にいる伊東は一つ内側のレーンを攻略することになる。
ここで肝になるのは、伊東が敵の左サイドバックと左センターバックの間のスペースを縦に抜け、ペナルティエリア内深くに侵入するプレーを常に狙っているところである。ここはニアゾーンといわれ、最近では「ポケット」とも称されるエリアだが、基本的に5レーンを意識した[4-3-3]システムでは、この「ポケット」をいかに狙っていくかが相手攻略への重要な道筋となる。
鍵を握る「ポケット」への侵入
世界トップレベルでこの狙いを毎試合実践しているのが、マンチェスター・シティ。言わずとしれたジョゼップ・グアルディオラ監督率いる集団は、ポジショナルプレーの概念を最も高いレベルで実現しているが、ペップは常にウイングやインサイドハーフにこの「ポケット」侵入を落とし込んでいる。中でも最近ではイングランド代表のFWラヒーム・スターリングを右サイドに置き、彼がまさに伊東同様にワイドな位置取りからの突破に加えて、ハーフスペースから「ポケット」に入っていくプレーを繰り返している。
伊東のこの「ポケット」侵入、中国戦ではFW大迫勇也のPKを獲得した場面がまさに好例だ。ゴールライン付近の深い位置まで入り込んだあのシーンのように、斜めの動き出し(ダイアゴナルラン)で「ポケット」目掛けて走り出し、そこに斜めのパスを入れていく。すると相手DFは立ち位置が揺さぶられ、さらに真正面ではなく斜めのボールと人の動きを追うことで視野も定まらない状態となる。そして、そこに伊東の場合は爆発的なスピードも加わり、敵を混乱に陥れることができるのだ。
伊東は後方の右サイドバックがDF山根視来のような内側のレーンに立つことを得意とする選手ならば、幅をとった位置からサイド突破をしかける本来のプレースタイルに戻ることができる。「自分が幅をとって、パスを受けるときにサイド、裏を狙ったり、縦にいくのは何回か出たかなと思います」と本人も中国戦を振り返るが、基本姿勢はワイドに開きながらも、パスを受けるタイミングでスペースへと走り込んでいくイメージができている。今の森保ジャパンにおいて、伊東が単なる個人突破だけでなく、戦術的にも欠かせない存在になっていることがこうした働きからうかがえる。
サウジアラビアも4バックが基本布陣。日本の5レーンを意識した右サイドの攻撃は、この試合でも大きな武器になる。理論に基づいた動きと、わかっていても止められないスピード。前回のサウジアラビア戦を累積警告で欠場していた伊東は、今回どんなパフォーマンスを見せるのか。
「次もゴールに絡めるようにしたいけど、自分の特徴はアシストやチャンスメークだと思っている」
もはや期待したいのは、ゴールもアシストも好機演出もすべて。満を持して、ライバル相手に日本の“右の矢”をぶつけるときが来た。
サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の日本代表担当記者兼、事業開発部統括マネージャー。過去に名古屋、川崎F、FC東京担当を歴任。名古屋担当時代に本田圭佑や吉田麻也を若い時代から取材する機会に恵まれる。その他雑誌『Number』や新聞各紙にも寄稿する。
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