11月22日に行われたFIFA ワールドカップ カタール 2022グループC第1節では、リオネル・メッシ擁するアルゼンチンとサウジアラビアが対戦した。サウジアラビアは前半に先制を許すが、後半の2ゴールで逆転。優勝候補アルゼンチン相手に金星を挙げた。
解説の細江克弥氏は、サウジアラビアが取った戦術を「肉を斬らせて骨を断つ」と表現。サウジアラビアはこの試合で、ハイラインを敷きピッチの中央にプレスをかけた。両サイドと相手の最終ラインにはプレスをかけず、極端な戦術を選んだ。かなりリスキーだったが体力の温存に成功し、後半に逆転。この戦術を選択したルナール監督の決断が、大番狂わせにつながったと分析した。
フォーメーションはアルゼンチンの4-2-3-1に対して、サウジアラビアは4-4-1-1。このシステムを守りながら中央に集中させて守ることが、サウジアラビアの戦い方で最も特徴的な点だった。細江氏は「ハイライン時には相手の最終ラインにプレッシャーをかける必要がある。だがサウジアラビアは背後のスペースを取られることは仕方がないと割り切り、とにかく中央を守ることを選んだ」と解説。林陵平氏も、「背後のスペースを消すより、2ライン間のスペースを消す方がアルゼンチンにとっては有効だった」と述べている。
この戦術はアルゼンチンのエース、メッシ対策でもあった。駒野友一氏も、「メッシは裏に抜けるより、空いたスペースでボールを受けドリブルするのが得意。この長所を消すために選んだ戦術だと思う」と指摘。サウジアラビアは相手エースを封じることで、アルゼンチンに効果的な攻撃をさせなかった。さらに前線が相手最終ラインにプレスをかけず、守備の範囲を限定することで体力温存に成功。後半開始早々の2得点にもつながった。
特徴的なシーンは25分。デ・パウルが下りてきて最終ラインからの組み立てに参加したところを狙い、ショートカウンターに繋げた。このシーンを見た細江氏は「アルゼンチンの最終ラインは裏へのロングボール精度が高くなく、サイドの使い方もうまくない。サウジアラビアはこの分析から、中央を固める守備を選択した」とコメント。綿密な研究をした上で選んだ大胆な戦術が、今大会最初の大番狂わせを演出した。
サウジアラビアのこの戦術はアルゼンチン戦限定だった可能性もあり、今後のポーランド戦とメキシコ戦の戦い方にも注目だ。
なお番組では一戦をはじめ、22日に行われた試合のレビューを行っている。